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大垣つれづれ

  • 西宮と垂井のマンボウ
 谷崎潤一郎の『細雪』に、江馬細香の竹の絵や詩集『湘夢遺稿』のこと、頼山陽との師弟関係、父蘭斎や梁川星巌、その妻紅蘭などの話が出て来る。下巻で、蒔岡家の三女雪子が垂井の知人宅で名古屋の素封家の当主と見合いをするくだりである。姉妹たちが近くの川で蛍狩を楽しんだ翌日、関ケ原の役以来の旧家とする菅野家の座敷での会話に大垣の文人絡みの話題が出る。ただ今回の主題にかかわるのは、そのあとに続く四女妙子と奥畑家の三男啓三郎の付合いに関する話の部分である。家から勘当された啓三郎は西宮で一人暮ししており、「マンボウ」のすぐ近くにあるその住まいを女中頭のお春が偶然のことから知る。谷崎は彼女がこの語を使って二女幸子に場所を教えたことを記したあとに長い注を入れ、「これは現在関西の一部の人の間にしか通用しない古い方言」であり、もとはオランダ語の「マンプウ」から出たもので、そう発音する人もあるが、「京阪地方では一般に訛って」お春が言ったように言うと書く。要するに電車が走る堤防の下に造られた人が辛うじて潜れるくらいの高さのトンネルで、啓三郎がいま住む家を出てそれを抜けると、父親の入院する病院に通うお春がバスを待つ停留所のところに出る訳だ。
 谷崎は「マンボウ」は電車が多く走る関西特有のものと思っていたかも知れないが、実は全国に拡がっていて、垂井の少し東京寄り、すなわち大垣から穂積の駅あたりにも「マンポ」と呼ばれる同種のものがいくつかある。東海道線が揖斐川や長良川の土手と同じ高さを走るために盛土を必要とし、それが既存の道や水路と交叉するゆえだ。言葉がオランダ語起源というのも、京阪地方で当時そう理解されていたのであろう。この語源についてはいまだ決定的なものは見つかっていないようだが、銀山や銅山の坑道、さらには鉱区について言う「間歩=マブ」(ブの音にはいろいろな漢字が充てられる)がいちばん近そうに思われる。さらに「マンボウ」「マンプウ」「マンポウ」「マンボ」「マンポ」「マンプ」など、起源が同じと思える名称のものが各地に存在するが、その内容は大きく3つに分類出来そうだ。第一は鉱山の坑道そのもの。第二は地下の水脈を求めて地中に横堀りした水路、これはイランの「カナート」やアフガニスタンの「カレーズ」と同じ原理で造られる山裾の地下水を溜池へと導く灌漑水路であり、岐阜、愛知、三重の各県を始めとして広くに存在し、垂井地域にも多く造られていたことが分かっている。そして3つ目が『細雪』で言及されている鉄道線路の盛土下に造られる狭い通路や水路である。これは先述した通り、新しく設置される線路が既存の道路や水路を横切るゆえの工作物で、とくにこれらが上部の線路と斜めに交叉するときには、荷重のかかり方を考慮して周壁の煉瓦積みをねじった形にする。いわゆる「ねじりマンポ」で、京都南禅寺近くのインクライン下のものが知られているし、大垣近傍の東海道線にも見ることが出来る。こうした「マンポ」は一般の通行人には幅や高さの狭いトンネルと映るが、国鉄以来の鉄道での扱いは「橋梁」であり、それぞれ何々橋梁という名札が付いている。なるほど高みを行く線路を主体として考えれば、たとえ水路を渡らなくともたしかに「橋梁」であるに違いない。
2018.1.22

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