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地域史研究のお手伝いをする大垣市立図書館の「郷土資料講座」講師、横幕 孜さん(78)


「いろんな記録を残している」と
江馬活堂の魅力を語る横幕孜さん
 岐阜県大垣市立図書館(大垣市室本町)主催の「郷土資料講座 藤渠漫筆(とうきょまんぴつ)を読む」が今年度も1月〜2月にかけての全4回、市立図書館に隣接する市スイトピアセンター学習館で開かれた。郷土資料講座は、大垣藩医・江馬活堂著の「藤渠漫筆」に記された資料を読み解き、当時の歴史を学ぼうと、2016年度から毎年度に開いているもので3回目。公募で集まった歴史好きな約60人が毎回、熱心に聴き入っていた。元大垣市史編纂室専門員の横幕孜さんは「活堂は博学でいろんな記録を残している。特に藤渠漫筆は多種多様な内容が含まれており、読み解くことで当時の歴史に触れてほしい」と話す。
 活堂(元益)は文化3(1806)年3月、西洋医学の先覚者といわれた江馬蘭斎の孫として誕生。幼名・益也。隠居後、活堂を名乗る。明治24(1891)年1月に86歳で亡くなる。藤渠は雅号。「藤渠漫筆」をはじめ、「勤方記録」や「近聞雑録」など多数を著わしている。「藤渠漫筆」は40編119冊あり、大垣地域だけでなく、他地域も含めて、自然、歴史、医術、宗教、民俗など多種多様な内容が含まれている。2003(平成15)年度から11年かけて編纂された「平成の大垣市史」の「資料編 近世一」でも大垣に関する分が掲載された。


「藤渠漫筆」について熱心に学ぶ
受講生=大垣市スイトピアセンター
 市立図書館では、全体が活字化されれば多方面での活用が期待できると考え、2014年度から4編づつを1巻にして毎年度末に刊している。活字化は市史編纂に携わった横幕さんが担当。今年度末には第5巻が刊行される。計画では第10巻まで発刊される予定。資料講座は、市民からの要望もあり、2年後にスタート。毎回、横幕さんが講師を務めている。


大垣市立図書館が活字化させた
「藤渠漫筆」1〜4巻
 今年度の講座は、昨年度末に発刊された第4巻がテキスト。1月23日の今年度初回の講座では、活堂が藩医を引退後の文久2(1862)年2月20日から3月17日まで関西を旅した様子を記した「文久二戊年西遊紀行」を中心に分かり易く説明。「弟子や門人もたくさんいたんですね」などと、登場人物と活堂との関係のほか、病人を治療したり、あちこちで骨董品を買ったことなどを話した。文中のコラムなども紹介した。受講生たちはペンを手に熱心に聴き入っていた。受講生の中にはは歴史を調査・研究している人も多く、専門的な質疑応答もあり、毎回充実した講座だった。1月30日の2回目では、「美濃国大井荘大垣八幡宮縁起」を中心に勉強した。3回目は2月6日、最終回は同20日に開かれた。


大垣市立図書館。
左奥にみえるのが
大垣市スイトピアセンター
 高校2年生のころから歴史が好きだった横幕さん。岐阜大学の史学科で学んでいたころから古い記録書を読んでいたという。「平成の大垣市史」には、市史編纂室長を務めた清水進さんとともに最初から最後まで携わった。「藤渠漫筆を読むことで、これまで分からなかったことを解明することも多い。『大垣藩城代日記書抜』に書かれている『大臼三昧(だいうすざんまい)』の場所についても、藤渠漫筆の『元禄五年御用控云』で特定できた。あちこちに足を運んでも分からなかっただけに、見つけた時は本当にうれしかった」と語る。
 歴史好きな横幕さん。「藤渠漫筆はあちこちで活用されているが、全部は珍しい」と市立図書館での刊行を喜ぶ。「江馬活堂の著作のうち、医者をしていた時に書かれた『勤方記録』は既に一部活字になっている。活堂が生きた時代を記録した『近聞雑録』100冊と『続近聞雑録』13冊も活字化したい。これからの目標です」と話す。
2019.03.01(子林 光和)

今回の西美濃な人

横幕 孜(よこまく つとむ)

 岐阜大学学芸学部(現・教育学部)史学科卒。大垣市立興文中や星和中など県内小中学校で教壇に立つ。大垣市立西部中校長なども歴任。現在も大垣市文化連盟専務理事や霊山顕彰会岐阜県支部副支部長を務める。「頼まれれば、自分の都合がつけば協力させてもらう」と、大垣市興文地区センターで毎月2回開催される「古文書読解講座」の講師も務める。出版社や自治体からの依頼を受けた出版物の執筆も数多い。大垣市郭町在住。


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