刀や扇を持って舞う舞踊「剣詩舞」。武士から興った舞踊文化が、明治初期に詩吟に合わせて詩情を舞う現在の形式に整えられたと、言われる。刀を持って舞うのが「剣舞」、扇を持って舞うのを「詩舞、扇舞」と呼ばれる。礼節を重んじ、精神文化の継承を目指すとも。
「天辰神容流」は、2006年に北辰神明流宗家から分流独立の許しを得て誕生した平成生まれの新しい流派。愛知県東海市に本部を置き、愛知県を中心に岐阜県や長野県に教場がある。岐阜県下では、安八町のほか、瑞浪市や各務原市、岐南町に教場があり、稽古をしている。「和」を大切にし、みんなが仲良く、最後まで続けられる稽古をするという。
大倉さんが剣詩舞を始めたのは5歳の時。踊りが好きだった祖母に勧められたからだ。「祖母の希望で始めました。祖母には3人の子どもがいたのですが、男ばかりで、孫に女が生まれたので、自分がやりたかった踊りを習わしてくれたのです」と、懐かしむ。当初は、祖母に褒めてもらうのがうれしくて稽古をしていたが、高校2年の時、北海道で開かれた「全国高校文化祭」に出場したのがきっかけで「見てくれる人がいるから楽しいと、発表する喜びを感じるようになったという。発表した剣詩舞が岐阜県を舞台にした構成で、会場にいた岐阜県出身の人に喜んでもらったことが大倉さんの心を動かした。2013年の「全国詩舞コンクール決勝大会(キングレコード主催)」では、詩舞一般一部で優勝している。
20年前から指導する立場になった大倉さん。現在は、全日本剣詩舞道連盟の錬士五段で、天辰神容流正師範。安八教場で指導を始めたのは2006年から。毎週水曜日の午後7時から指導をしている。指導を受けているのは西美濃地方の50歳台〜80歳台の女性4人。教師や自営業手伝い、主婦など職業は様々。「自分の家で仕事をやっているだけだとストレスがたまる。みんなと一緒に踊るとやる気や元気が出る」と、40年以上続けている人もいる。女性たちは、コンクールや地元の文化祭やイベントなどで稽古の成果を発表もしている。
「和」と「礼節」を大切にする大倉さん。女性たちが、コンクールなどに出場する前にはみっちりと指導するが、コンクールが終わると、2時間の稽古のうち、半分を稽古、残りをお茶会にしてみんなでお菓子を食べながら楽しくおしゃべりをすることもある。
安八教場だけでなく、本部や他の教場にも足を運ぶ大倉さん。「楽しく踊ってコンクールで入賞した時の喜びは格別。年齢には関係ない。もっともっと若い人にも剣詩舞の楽しさや良さを分かってもらい、仲間になってほしい。若い人が稽古を積み、次の人を指導するように育ってくれることが今の目標。これからも謙虚に和を大切に剣詩舞にかかわっていきたい」と言う。頑張って。期待しています。
2017.04.03(子林 光和)