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真心を込めてそばを打つ「谷そばの会」会長、小寺 孫八郎さん(77)


小寺 孫八郎さん
 戦国時代に豊臣秀吉の軍師として活躍した竹中半兵衛(1544〜1579)の居城があった岐阜県垂井町岩手地区。小寺さんたち「谷そばの会」の会員たちは、城跡近くの地区の転作研修所で、地区の英雄の名前を付けた「半兵衛手打ち生そば」を作り、地区を通る県道・岐阜〜関ヶ原線沿いの農林畜産物直売所「半兵衛の里」で毎週土曜日に委託販売している。「手打ち生そば」は、地元で栽培されたそばを使い、地区を流れる岩手川の水を利用した水車小屋の石うすでそばの実を挽き、販売する日の早朝に手打ちした「挽き立て、打ち立て、生そば(二八そば)」。小寺さんは「そば打ちに完成はない。何年経っても難しい。粉の状態、その日の温度、湿度などによって差す水の量が違う。会員たちはまだ修業中ですが、お客さんから『おいしい』と言ってもらえるのが何よりの喜び」とにこやかに語る。


真心を込めてそばを打つ会員
 「谷そばの会」の会員は現在、50歳代〜80歳の9人。うち女性も2人。ほとんどが定年退職した人たち。小寺さんは3代目会長。会員たちは、委託販売する毎週土曜日の午前7時に研修所に集まりそばを打つ。そば粉に水を差しながらこねて、さらに長方形の板状に伸ばしたのをそば包丁で切り、真心を込めた商品に仕上げていく。包丁はすべて会員の個人所有でかなり高価なこだわりの品。さらに、会員の中に法で定める食品衛生責任者の資格を持つ人も置き、衛生面には特に気を付けている。「手打ち生そば」は1食分300円(税別)。現在は1回に12食分だけという限定商品。「腰があっておいしい」と、地元の人たちやドライバーたちが買い求めている。会員たちは「もうけるためにやっているわけではない。素晴らしい仲間がいて、そばを打つのが楽しみでやっているのです」と、屈託なく話す。そば粉も6食分500円(税別)で、半兵衛の里が営業している毎週水・木・土・日曜日の午前9時〜正午に販売している。会は、地区のまつりやイベントなどで年5回、手打ち生そばを販売するほか、毎年1月に子供たちを対象としたそば打ち教室も開いている。


そばの実を挽く半兵衛水車小屋
 会が発足するきっかけとなったのは、「地域の耕作放棄地を活用したまちおこしを」と始めたそばづくり。10年ほど前に有志が10人ほど集まり、耕作放棄地でそばを育てる一方、県内各地の道の駅や名古屋市のカルチャーセンターなどで開催されていたそば打ち教室に通い、そば打ちを習った。会の名前も地区の小字名から付けた。「こだわりのそば」を求めて京都府や福井県へ試食に出かけた会員もいる。当初は自分たちだけで、そばを育て、手打ちそばにして食べていたが、4年ほど前から、「おいしいそばを、より多くの人に食べてもらおう」と、直売所での委託販売を始めた。そば粉づくりも会員の家で行っていたが、2009年に国などの補助を得て、水車小屋が地区内に建設されるのに併せて水車小屋内に石うすを備えるなどしてそば粉づくりを本格的に開始。現在はそば栽培は地元の農事組合法人「ファーム岩手」(渡辺寛司代表理事)に任せ、そば粉と手打ちそばづくりに励んでいる。


委託販売されている「半兵衛の里」
 転作研修所でそば打ちをしている会員たちの顔は明るい。そんな会員たちをながめながら、小寺さんは「垂井町内にはまだ道の駅がない。道の駅で手打ちそばを売りたい。道の駅が出来るのが待ち遠しい。出来たら、常時販売出来るようにしたい。そのためには、会員も増やしていきたい」と語り、夢は広がる。
2014.09.01(子林 光和)

今回の西美濃な人

小寺 孫八郎(こでら まごはちろう)

 元中部電力社員。岐阜、三重、名古屋支店などで勤務した。父親が軍人だった関係で幼少期を広島県呉市で過ごしたが、戦争が激しくなり、母親の実家のある垂井町岩手に引っ越した。エレクトーン演奏や戦艦大和などの模型作り、木工芸などと多趣味。家庭菜園ではトマトやナス、キューリなどを育てる。本人は「我がまま気まま」と言うが、周囲は「人当たりの良い優しい人」と言い、「はっちゃん」と親しみを込めて呼ぶ。


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