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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

がんばりすぎずに……

 空が白みはじめる頃に起き、少し書きものをしたり考えごとをしたりしていると、あちこちから小鳥のさえずりが聞こえ、寺の鐘が六時を告げます。さあ、朝食の準備にとりかかろうと厨房に立つのが、私の一日の始まりです。

 冬から春にかけて自然は様変わりしていきます。クリスマスローズが茎を伸ばし、梅の花が咲き終わったと思えば、木蓮のつぼみがふくらみはじめ、水仙やヒヤシンス、チューリップ、貝母が咲き、気づくと雪柳や蘇枋が「私たちも見て。」と存在を主張するかのように咲きはじめています。

 こんな平凡な日常を送る私ですが、昨今のウクライナのニュースには心が痛みます。それぞれの国には長い歴史があるのは当然ですが、穏やかな日常を奪われたウクライナの人々のことに思いを馳せると、いたたまれない気持ちになります。数日前にはロシアの高官が北海道の領土権について言及していましたが、平和を脅かされる日が来ないとも限らない。そんな不安も胸をよぎります。

 あれこれ考えながらテレビをつけると、旅番組をやっていました。江の島電鉄で鎌倉を訪ね、苔について研究をしている方を紹介していたのです。鎌倉は寺が多く、寺の石段などにはえている苔を十倍のルーペで見るとどの様に見えるのか映像で見せていました。小さな葉がきれいに並んで緑の美しい苔、葉が透けて見える苔など様々な種類の苔がありました。中には、こげ茶色をした苔があって、もう枯れてしまっているのだろうと思われたのですが、苔の研究者の方が「ちょっと待って下さい。」と言って雨の代わりに水を与えられたのです。すると何と美しい緑に変わりました。その方は、こう言われました。「苔は雨が降るのをじっと待って眠っているのです。がんばりすぎずに時を待ち、やがてその時が来ると(雨が降ると)目を覚まして活動を始めるのです。」と。

 「がんばりすぎずに時を待つ」とは、自然界の営みなのでしょうが、人は違います。𠮟咤激励されてがんばろうとします。時には自分の力以上のことをやろうとして、頑張りすぎて心が折れてしまうこともあるでしょう。苔の映像をながめながら子ども達のことお想いました。刻々と変わっていく世界情勢も気になりますが、子ども達は新年度にどんなスタートを切ったのでしょう。新しい環境の中で頑張りすぎず、心豊かに過ごしてほしい。私の願いです。


2022.4.11 発行



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