「青野ふるさと福祉村」が誕生したのは、2006年5月。青野町は岐阜県垂井町に隣接する高齢化率約25%の大垣市郊外の農村地帯。これといった娯楽施設もなく、住民たちは「市の中心部にはいろんな施設があるが、青野町は公共交通機関もなく、ここに住む高齢者にとっては利用しにくい。それならば、自分たちの手で皆が集える場をつくろう」と立ち上げた。「ひゃくえん喫茶・みのる」は、大垣市社会福祉協議会が町内の古民家を借りて開設している「福祉の館デイサービス青野」(小規模デイサービス)の空きスペース(和室部分5室約40畳と台所など)を利用して同年10月に開店した。会場は絵画など、地元住民たちの趣味の作品展示場になっており、のんびりと眺めることができる。理事長は青野町自治会長が務めるほか、自治会役員や民生児童委員などの各種団体役員らが理事を務める。
世話役(店員)は全員ボランティア。現在は、自治会などの呼びかけに応じた約45人が登録して毎回4〜5人が交代で務めている。特定の人に負担がかからぬように3カ月ごとに日程表をつくり、順番で回している。さらに「世話役の人も家族の昼食の用意ができるように」と、午前11時半には閉店する。メニューは、コーヒー、紅茶、ココア、ゆず茶、ジュースなど。お茶菓子も付いている。利用するのは、地域住民など毎回30〜40人。毎回のように顔を出す人も多い。隣接するデイサービス利用者も訪れ、地域住民と和やかに話し合っている。利用者たちは「ここにくると、皆と話し合えるのがうれしい」「町内のことだけでなく、いろんな情報が得られる」「地元の昔の話が聞ける」などとうれしそうに話す。
「利用者に喜んでもらえれば」と、2015年最後の開店日となった12月26日はクリスマス会としてケーキやシャンペンが出たほか、参加者全員に景品がもらえる楽しいビンゴゲームもあり、孫と一緒の人など約70人が参加した。青野ふるさと福祉村は、「ひゃくえん喫茶・みのる」のほか、住民たちがボランティアの講師となり、子どもたちに行儀見習いを兼ねた書道教室なども開いている。活動は大垣市社会福祉協議会のホームページで紹介され、大垣市内外だけでなく、東海3県や北海道、鳥取県などからも視察に訪れている。昨年5月には韓国からの視察団もあり、高齢者と世話役のボランティアたちが楽しく話している様子を見て「韓国でも同様の施設をぜひ開設したい」と話していたという。
藤井さんは「青野ふるさと福祉村は、そこに住む人たちが皆で支えあい、助け合い、安心して住める町づくりを目指している。ひゃくえん喫茶・みのるは、そんな願いが込められた場所。多くの人に利用してもらいたい」と、語りかける。
2016.02.01(子林 光和)