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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

以心伝心

 わが家の犬について以前にも書いたことがある。捨て犬であった母から生まれ、兄弟は全て保健所に連れて行かれ、一匹だけかくれていて助かった仔犬だった。あれから九年が経ち、棒が怖い、人が怖い、雨が怖い・・・・と怖いものだらけだった仔犬が、今はすっかり家人(?) になりきっている。
 彼女は実に面白い。実に多くのことを私に考えさせてくれるので、自分の心のもち方を反省したりもする。
 昼間は外にいるのだが、夜になると手足や体をふいて上に上げることにしている。顔、首、背中・・・・という順にふいて、前の方をふき終わると、彼女はくるりとお尻の方を向ける。この順序を違えると、とたんに彼女は不機嫌になるのである。しかも常々使っているタオルでなく、時にTシャツの古布などを使おうものなら、まるで抗議するかのように、音に高低差をつけて唸り続けるのである。おそらく、感触のちがいが嫌なのだろう。
 この時に「そう、嫌なの。」などと、やさしく穏やかにこちらが応じれば「そうよ、本当に、もうー。」と言っているかのように、しばらく声を出して落ち着くのだが、私が「ダメでしょう!そんなに怒って!!」などと声を荒げて言おうものなら、「ウ〜。」と逆におどしてくる。
 人間の世界でも「売りことばに買いことば」と言ってけんかごしに言ったことばに対して負けずに言い返すことはよくあるが、犬も同じなのだろう。
 こちらに余裕がある時は、彼女もゆったりして、前足を伸ばして私の手を取り「おなかを さすってよ!」と目で訴えかけてくる。まさに以心伝心である。

 人間は ことばを持つが故にことばで表現し、ことばで分かり合おうとする。話せば分かると思ってしまう。しかし、ことばが全てではないところに悲劇もおきるのである。心を寄せることの意味を考えていると、わがポポは、すでにストーブの前で快い眠りについている。


2012.2.14 発行



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