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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

母の思い

愛したるより愛されしこと多く思い出されて盆ゆかんとす

 この短歌は、九月二十五日に中津川市で行われた中日歌人会の短歌大会に出詠された作品で、作者は医療禍で寝たきりになってしまった息子さんを、長年にわたって看護しつづけ、昨年、『天の梯子』という歌集を出された稲垣道子さんである。
 私は選者の末席にあって、この作品をとらせていただいた。「愛」ということばは、大上段に言われると、薄っぺらに思えることも多いが、作者を知れば「愛」ということばに含まれた深い思いが胸に迫ってくる。医療禍のご子息は三年前に亡くなり、稲垣さんの二十二年八ヶ月に及ぶ看護の日々は終わりを告げたが、母の思いは永遠であろう。
 医療事故で寝たきりになった息子を慈しみ愛しつづけた稲垣さんをして、愛したことより愛されたことの方が多かったと言わしめるのは、感謝の思いであろうか。自分を支えてくれた多くの人々がいたこと、そして自分が愛しつづけてきたと思っていた息子さんからも実は愛されていたのではないか……お盆は亡き人に思いを寄せる日でもある。

 支援センターでかかわるお母さん方は、我が子が発達障がいとわかった時、どんな思いでいらっしゃったのだろうか……。自分は一人ぼっちだと思われたかもしれない。言い表しようのない深い淵に落とされるような思いをもたれたかもしれない。しかし、お子さんが命を授かったということ、そして、そのお子さんの命もお母さん方も、目に見えないけれども多くの人の支えがあって、今、ここの在るということに気づいてほしいと私は思っている。そして一人でも多くの人が発達障がいを理解し、子どもたちの“困り感”を知って手を携えていってほしいと願っている。もちろん、私もその一人でいたいのである。


2011.10.11 発行



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