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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

心浮きたつ春の日に…

 立春を過ぎ、今日(二月十日)は、先日の大雪は何だったのかしらと思う程の陽気です。私の母は生前に「早春賦」をよく口ずさみ、特に三番の「春と聞かねば知らでありしを聞けばせかるる胸の思いを…」という歌詞がとりわけ気に入っていたようでした。確かに春ということばの響きは、なぜか心浮き立つものがありますね。

 ところで、私は心浮き立つ春というのに、最近老いを感じるようになりました。胸につけたブローチの鳥の名や花の名が咄嗟に思い出せないのです。子どもたちの中にも質問されてもすぐに言葉が出てこずに思わず手が出てしまうというようなこともありますが、まさに語想起の弱さです。その上、頭の中では漢字の熟語が思い浮かんでいるのに、間違った文字を書いてしまっていることもあります。先月号をお読み下さった方はお気づきと思いますが、“結論”と書くべきなのに“決論”と書いていました。あとで気づいて赤面してしまいましたが今後はこのようなミスが増えていくのでしょう。困ったことですが、これも自然のなりゆきなのでしょう。

 そんな思いにひたっていましたら、連休の初日には世界的な指揮者の小澤征爾さんの訃報がとび込んできました。昔は、毎年松本で開催される「サイトウキネンオーケストラ」を聴きに出かけたものでした。このオーケストラは桐朋学園大学の創設者の一人であった故齊藤秀雄教授の教え子たちが世界中から集まってきて演奏会を開いたのです。指揮はもちろん小澤さんでした。

 私の連れあいの勤めていた会社は、本社が松本で協賛もしていましたので吾が家の応接間には若かりし頃のパネルが飾ってあります。演奏会のチケットを手に入れるのは大変でしたが、一年に一度の演奏会で私たちは幸せな時間を過ごすことができました。最後に行った時には、小澤さんは車椅子で登壇し、立って指揮をし、一曲終わると椅子に座り…という状況でしたが、その姿からは、いつまでも高みを目ざし続ける気迫が感じられ、胸を打たれました。老いは誰の身にも訪れてきますけれど、私は私なりに老いに向き合い、学びつづけていきたいものだと思っています。

 庭先でクリスマスローズが咲きはじめました。白い花よりも先に赤紫のつぼみが開いています。今年もまた元気にこの花に出会えたことを喜びとして、年度末を乗りきっていきたいものです。


2024.2.19 発行



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