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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

庭の千草

 秋が日に日に深まって、いつのまにか秋明菊は散り果てて小菊が咲きはじめました。「庭の千草」の歌詞のごとく虫の音は絶えてしまいましたが、早朝、少しの空が明るんでくると鳥たちの囀りが聞こえてきて、さあ、今日一日もがんばろうという気にさせてくれます。

 私は、今日は書評を頼まれていた『雨の韻律』という歌集に目を通しました。岡本遙子さんという九州在住の方の歌集です。その中に心惹かれた作品がいくつもありました。

 つましくも凛とあるべし白梅を眺めし母の静かなるこゑ

 この方は、コロナ禍で入院中のご主人と会うことも叶わないまま見送られ、ご主人への惜別の歌も多々ありましたが、次のような作品も見られました。

 プーチンの核を厭はずと吐きし日の書棚に潜む『この子を残して』

『この子を残して』は長崎で被爆された永井隆博士の著作で、映画にもなり「長崎の鐘」という歌にもなりました。私の書棚にもあり、二人の子を残して旅立たねばならない父親の真情がつづられていました。ご自身は病床にありました。

 ロシアのウクライナへの侵攻、イスラエルとパレスチナの戦闘など世界のあちこちで戦争がなくなることがありません。人類はいつまで戦争を続けていくのでしょうか。平和だと思っている我々日本人にとっては、遠い異国の出来事で、映像の中のような錯覚さえも抱いてしまいそうです。でも多くの人々の日常は奪われ、子ども達は死と隣り合わせに生きているのです。心痛む日々が続きます。戦争だけではありません。飢えに苦しむ子どもたち、病気になっても薬もなく、ただ死を待つだけの子どもたち。そして、何もしない私たち。何もできない私たち。でも核が使われれば人類は滅亡に向かっていくのでしょう。

 岡本さんの歌集を読み終え、世界情勢のことなどを考えながら庭に出てみると、山茶花の鮮やかな白が目にとびこんできました。ああ、もう山茶花の季節なのか……時は流れていき、
それでもひとときの安らぎを与えてくれていることを倖せに感じたことでした。


2023.11.13 発行



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