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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

苔むした桜の樹に寄せて…

 先日、園内研修会があって古巣のひまわり学園に出かけました。私が勤めていた頃からすると、知っているメンバーは四分の一位になっていましたが、職員の方と共に園内の樹々も私を迎え入れてくれました。私が大好きな桜の樹には苔がびっしりと生えつき、見るからに古木になっていました。「今年もたくさんの花をつけてくれましたよ。」と、私の思いを推し測って下さったM先生が報告して下さいましたが、来年はこの園舎ともお別れです。「この樹はどうなるのでしょうか。切り倒されてしまうのでしょうね。と、寂しい会話になりました。

 半世紀前には、障がいがあると小学校に通うこともできず、就学猶予、免除という制度が子ども達の学ぶ権利を奪っていました。大垣市では、昭和四十三年に知的障がいのお子さんのための通園施設として川並学園が開園しましたが、肢体不自由のお子さんの施設は後になりました。保護者の方達の願いが叶ったのは、昭和四十七年、「重度肢体不自由母子通園施設」としてひまわり学園が開設されたのでした。

 私が赴任した時は脳性小児まひや進行性筋ジストロフィーのお子さん達が通っていて、南小学校と南中学校の肢体不自由学級でもありました。私はそれまで関わっていた子どもたちとは全くちがう子ども達に出会って、自分に何ができるのだろうかとずいぶん悩みましたが、子ども達が多くのことを私に教えてくれました。あらためて命の大切さを学ばせてくれたのも子ども達でした。ひまわり学園の子ども達と出会わなければ、今の私はなかったに違いありません。

 満開の桜の下を散歩した日々、散った花びらがじゅうたんのように敷きつめられた園庭で子ども達が歓声をあげたことなど思い出が甦ってきます。そして二十歳を迎えることなく逝ってしまった多くの子ども達のことを私は忘れることはないでしょう。

 苔むした桜の樹を見上げつつ感傷に浸った一日でした。みんな、私と出会ってくれてありがとう。学ばせてくれてありがとう。心の中で呼びかけて学園を後にしました。


2023.7.10 発行



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