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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

パッチワーク

 三月も半ばとなり、梅が咲き、今朝はうぐいすの声が聞こえてきています。

 この頃になると、私は遠い昔の同級生のことばを思い出します。大学時代、福祉の道に進みたいと思って心理学を専攻していたのですが、ある時、こう言われたのです。
「君の知識はつぎはぎだらけだよね。一本筋が通ったところもなく、福祉の道に進みたいと言いながら何でも中途半端な気がするんだよね。」

 大学卒業後、関西で男性として保育士(保父)第1号になった彼は、私の親友と非常に仲の良い人でしたから、おそらく私の良い加減さが目に余ったのでしょう。ただ、この言葉はずっと心に残っています。それは、私という人間を言い当てていた言葉だと思うからです。あの時から何十年もの歳月が経ちましたが、私は今もつぎはぎだらけの知識を駆使して子どもたちやお母さん方、先生方と向き合っています。そんな己の姿に成長していないなあと思いつつ、私ってパッチワークを作ってきたのではないかなあという思いに至っています。

 一つの事を深く深く掘り下げていく人もいらっしゃるでしょうが、私はつぎはぎだらけの小さな知識をつなぎ合わせて一枚の布にしようとしてきたのではなかったか、そしてそのパッチワークは、まだ沢山の穴があいていて、おそらく一生かかってもその穴を埋めて一枚の布を作り上げることはできないのだろう・・・と思うのです。

 季は春。別れの季節でもあります。幼い頃にかかわった子どもたちが「○○大学へ合格しました。」「一人暮らしを始めます。」「就職します。」等々新しい一歩を踏み出していきます。悩み苦しみながら子育てをして来られた一人ひとりのお母さんたちの顔を思い浮かべ、共に喜びをかみしめながら、いまだ悩みつづけておられる方々のことを思っています。でも、身の回りのことを一つ一つ、出来ることから始めていくことが、その人のパッチワークづくりになっていくのではないでしょうか。

 春になると小さな草々が芽生き、花をつけ、それぞれの命を輝かせようとしています。庭先にかがみこんで小さな草花に目をやる一瞬も私の人生にとって必要なことだなあと思う春です。


2023.3.13 発行



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