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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

挑むこと

 田舎に住んでいると、本当に多くの生き物に出会います。朝早くからさえずる小鳥たち、屋根から見下ろす猿、窓にはりつく守宮(やもり)、庭土を盛り上げる土竜(もぐら)、蝶や虫たち、そして今度はいたちのようです。色々な生き物が訪ねてくれるのは嫌ではありませんが、夜中に屋根を歩く音や屋根裏でゴソゴソする音には、ちょっと困ります。子どもたちの行動同様、「そう来たか?」「まあ、想定内だよ。」等と言っておられればいいのですが五時間睡眠の妨害にはいささか参っています。

ところで先日、NHKBSで「トランスジャパンアルプスレース」という番組を見ました。日本海側を出発して、八日間で北・中央・南の三つのアルプスを走破して静岡にゴールするという非常に過酷なレースです。予選を通過した三十名の男性が挑んでいましたが、途中で低体温症になる人、日焼けで太ももがただれても歩き続ける人、足裏にたまった水ぶくれが痛々しい人など、何故この様なレースに挑むのかと思いつつ見守りました。そして、何故か遠き日の父のことばを思い返していました。「お前は決して容易い道を歩くな。イージーゴーイングは駄目だ!」と、一人娘の私に対して、よくまあそんな言をと思ったものでした。高校卒業と同時に自宅に住むことを許されなかった私が、泣き虫で弱虫だった自分を変えていけたのは、そういう父の深い愛情のおかげだったと、今、思います。

「今までの自分は何をしても中途で投げ出していた。だから、そんな自分を変えたい。」と、レース参加の動機を語る人や「自分には子供もなくこの世に何も残すものがないが、以前このレースを見て感動した。自分がこうして挑戦する姿から誰かが何かを感じ取ってくれたら嬉しい。」と話す人もおられました。人は何かの機会に変われるのではないか、レースに賭ける人たちは、それぞれに自分自身に何かを課して挑まれたのでしょう。

そろそろ私立高校や大学受験の結果がもたらされてくる時期です。おそらく不合格だった子もいるでしょう。けれども人生は長いのです。一度の失敗がその後の人生を決めるものではないはずです。トランスジャパンアルプスレースの参加者の中には六十代の方もいらっしゃいました。人生は楽しいことばかりではありませんが何かに挑み続けることの大切さを改めて学んだ気がしました。

まだまだやりたい事、やり残した事がたくさんありますよね。


2023.2.13 発行



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