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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

移ろいゆく季の流れの中で

 十月の下旬に、老木の桃が花を咲かせました。白くて小さな花でした。桃の木の隣にある石榴は、今年三個の実をつけ、そのうちの一個だけが爆ぜて「食べられるよー。」と呼びかけてくれました。もう何十年もの間、敷地の片隅で二、三個の実をつけながら、一度も爆ぜることがなかった石榴だったのに、老木たちは、何を勘違いしたのでしょうか。真夏日の暑さから急に寒くなり、低温の日々が続いた後に、また少し温度が上がったので、桃は春だと感じたのでしょうか。
 
 ところが十一月に入って驚くことが起きました。夜がうっすらと明け初める頃に、ピーピーッと疳高い声で鵯が仲間を呼ぶ声が聞こえてくるのです。何と、我が家の柿がお目当てです。例年なら、私が十個程収穫した後、十一月下旬にやってくる鵯たちなのに、今年は早すぎます。空に向かって「まだ私は一つも食べてないんだから!」と大声で抗議してみましたが、鳥たちも啼きつづけています。仕方なく三個だけ捥ぎ取ってみると、何と、もうぶよぶよに熟しています。私よりも鵯たちの方が、柿の状態をよく知っていたのです。今年の柿は全て鳥たちに譲ることにしたのですが、驚いたことに、わずか三日程で、柿はすっかり姿を消していました。
 
 亡き母が挿した芽をしたり、鳥たちが土産物を置いていってくれたりして増えつづけた敷地内は雑然としていて庭と呼べるような状態ではないのですが、樹々たちは季節の移ろいを確かに伝えてくれています。鳥の囀りに目覚め、くもの巣をはらいながら郵便受けまで新聞を取りに行き、庭の木草をながめながら戻ってくるという毎朝の習慣は、私の生活の中に、ひとときの安らぎを与えてくれているように思えます。
 
 日々子どもたちと接していると、新聞を知らない子、切手を知らない子の多さに驚かされます。ゲームやアニメの世界には精通していて、ユーチューバーを志している子ども達にも多く出会います。発達障害支援法が制定され、発達障がい支援センターが設置され、途切れのない支援が叫ばれましたが、支援が必要な状況は増え続けています。十年後、二十年後、この国はどうなっているのでしょう。子ども達の未来は明るいものであって欲しいと願いつつ、己の無力さを思い知らされる日々でもあります。


2022.11.14 発行



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