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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

蕺草の花に寄せて

 庭先にどくだみの花が咲き、梅雨が真近になりました。

 どくだみの季節になったので、一輻の軸を出してみようと思い立ちました。それは、短歌の軸で一首を四人で詠んだものです。初句から三句までの一句ずつを三人が詠み、最後に四、五句を一人がまとめて一首に仕上げた作品です。

 ここ数年は出してなかったので思い立ったのですが、広げたとたんにビリビリと音をたてて破れてしまいました。
 戦後まもなくの紙不足の時代の表装なので紙が劣化していたのでしょう。幸い作品の部分は和紙だったため助かったのでしたが、破れた掛軸を前に作品が詠まれた当時の人達のことを思い起こしました。

 思想統制があり、文字の世界にも雑誌の発刊停止や黒ぬりの教科書などもあったと聞きますから、歌人たちが集ってこの様なことをすることは、戦時下ではできなかったことで、戦後にやっとひとときの安らぎの時がもてたということなのでしょう。

 戦後七十六年と言われても、私でさえ戦後生まれですから、多くの人にとって戦争は遠いできごとに違いありません。日本は豊かになり、物があふれ、廃棄される食材はとても多々あると聞きます。子どもたちの欲しい物はすぐ手に入り、好きなことさえしていれば良いという風潮も広がっているように思いますが、一方では貧富の差は広がり、児童虐待や障害のある方や高齢者に対する虐待もあとをたちません。

 ウクライナに対するロシアの侵攻のニュースは、決して他山の石と片づけられないような気がします。もしも今、何かが起きたらどうなるのでしょう。末長く安泰であるという保障はありません。そう考えると、今の私たちの生活を少し見直していく必要があるように思えるのです。皆さんはどう思われますか?
 
 破れてしまった掛軸を表装し直してもらおうと思いながら庭に出て、どくだみの花を剪ってきて、備前の一輪ざしにいけてみました。暗い部屋の一隅に花の白がきわだって、どくだみの花も捨てがたいと思ったことでした。


2022.6.13 発行



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