大垣地域ポータルサイト 西美濃


西美濃
トップ

ひまわりからのメッセージ

戻る
ひまわりからのメッセージ

真夜中のベル

 午前三時すぎに電話が鳴りました。けれど呼出し音は一回で切れてしまいました。起き出してみると非通知です。相手は心に悩みをもつ人かもしれませんが、毎日の睡眠が五時間程度の私にとって、三時の電話のベルで、結局朝までの眠りを奪われることになります。でも心病む人には、土・日曜も深夜も無いのでしょう。

 そんな生活の中ですが、六月の末に私は伊吹山のふもとにある伊吹薬草の里文化センターに出かけました。いつもは、新聞の折り込みに全く目を通すことのない私が偶然にも目にしたのが平山郁夫の版画展のちらしでした。

 平山郁夫は、シルクロードの作品を多く残しました。駱駝の背に乗って砂漠を旅する隊商の作品の前では、つい「月の砂漠」を口ずさみたくなります。私のあこがれだったパルミラの遺跡やバーミアンなどはテロで破壊されてしまって、もはや自分の目で見ることはできませんが平山画伯の作品の中で出会うことができます。

 以前にも書いたかもしれませんが、何故か私は砂漠に心惹かれます。私が旅した所は、いずれもゴビ、サハラ、タフラマカンなどにつながる国々でした。砂漠の中にこんもりと盛り土された墓と、殆んど平らになってしまった墓などを見ると、こうして人は大地に還っていくのだなあと思い、遠き代の人々に思いを馳せてしまいます。きっと私の祖先は砂漠の民だったのかもしれないと思ったりします。

 コロナ禍で旅にも行けず、美術館からも遠ざかっていた生活の中で、久しぶりの憩いのひとときでした。ほんのわずかな時間でしたが、私にはまだやれることがあるはずだ、やるべきことがあるはずだと目に見えないエネルギーをもらった気がしました。

 皆さんは、どんな日々をお過ごしでしょうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、大人たちの不安や葛藤が子どもたちの心に様々な影響を与えていくことを考えると胸が痛みます。マスク姿の子どもたちの目の動きや輝きから、その心を読みとろうと思いますが、十分なことはできません。願わくは、子どもたち自らがこの時代から何かをつかみ取っていってほしいと思います。そして私たち大人も自分を見つめ直す良い機会にしていけるといいですね。


2021.7.12 発行



ひまわりからのメッセージ