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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

夢、ゆめ、夢…… 〜母の日に思うこと〜

 さて「皆さんの夢は何ですか?」と、今、こんな時にたずねたりしたら、きっとひんしゅくを買うでしょう。「今、うちの工場は大変なんです。」「子どもたちのことでいっぱいです。」等々の声がわきおこって、「先生は吞気ですね。」と𠮟られそうです。でも、こんな時だから私の夢って何だったのだろうと思ってみるのも悪くないのではありませんか。

 「お花屋さんになりたい。」「ケーキやさんが良い。」「運転手。」など保育園の子ども達が夢を語るのを見ていて、私は小さい時にそんなことは思っていなかったなあと思います。でも、母が手芸が好きで、私のズボンの破れに当て布をしてししゅうをしてくれたり、セーターを編んでくれたりしたので、私も大きくなったら出来るようになりたいなあと漠然と思っていました。そして、思春期の頃からは、糸を紡いで、それを染めて、織って、洋服に仕立てることをしてみたいと思うようになりました。知的発達がゆっくりだったSちゃんに出会うまでは……。

 この道に進んだことを後悔しているわけではありません。生まれ変わっても、私はやっぱり子ども達に関わる仕事をしていきたいなあと思っています。でも夢は夢でいつか……と。

 今日は母の日です。ずいぶん前のことですが、娘たちが私に一冊の冊子をプレゼントしてくれました。「Memory」と題されたその一冊は、私の母と娘たちとの思い出が書かれていました。おばあちゃんが作ってくれたおやつのこと、畑に一緒に行ったこと、遊んだこと等々、そこにはおばあちゃんの思い出がいっぱい詰まっていました。そうなのです。幼い娘たちにとって私の母が母そのものだったのでしょう。私は母親として一体何をしたのでしょうか。教材を作る傍で「ひまわりの子は良いなあ。」「私も作ってほしい……。」と言われながら、私が母親として唯一娘たちに作ったのは、ウェディングドレスとベールだけでした。

 そして、おそらく私は、私の母のように孫たちから「おばあちゃんの思い出」と言ってもらえるようなこともないでしょう。母の日の今日、亡き母が残したつまみ絵の額やテーブルセンターをながめながら、「母としての役割」を私に代わって尽くしてくれた母のざらざらに荒れた手のことを思いました。そして、母の夢は何だったのだろうとぼんやり考えたことでした。


2020.5.11 発行



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