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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

身の巡り

 毎年、梅雨が明ける頃に、庭先の百日紅が咲きはじめます。

   百日紅赤きが先に咲きいでて
     秋に入りても咲く白き花  松村英一

 わが家には、赤い花の咲く木と、実生からはえた紫がかったピンクの花しかなく、比べようがありませんが、百日紅が咲く頃になると、この一首を思い出します。幼い頃の記憶というものは面白いものです。

 ところで、令和だ、改元だと言っていたのはいつのことだったかと思える程に月日は流れて、子どもたちはもうじき夏休みを迎えます。私が小学生の頃、夏の宿題に昆虫採集と植物採集がありました。母に、宿題を早くやるようにと言われつづけたにもかかわらず、遊び呆けていて、お盆すぎに、やっと重い腰を上げたのでした。でも、昆虫で見つかるのは、蝉と、しじみ蝶だけ、植物はすでに秋の草になっていました。母からは「だから言ったでしょう。」と、手厳しいお小言をもらったことを思い出します。毎晩眠れず、隣室から洩れくる豆電球のオレンジの光を見つめて後悔したものでした。きっと今年も何人かの子どもたちが私のような思いをするのだろうなあと思い遣っています。
 
 ただ、今も私は身の回りの事柄を手早く片づけられず机上に本や書類を積み上げて、原稿の期日に追われ、気持ちばかりあせる日々を送っていますから、「三つ子の魂百まで」のことば通り、おそらく一生この様に過ごしてしまうのでしょう。
 
 最近、とみに老化が進んできたわが愛犬ポポは、とぼとぼ散歩の途中でしばらく立ち止まって、「私、たそがれているのよ。」と言わんばかりに長い休憩をとっていますが、もしかしたら私も、もう少し年齢を重ねたら、たそがれ時を楽しむ余裕もできるのでしょうか。点滴のための通院、栄養ドリンク、排泄……と老犬介護も忙しくなりつつありますが、仔犬から老犬へと、人の一生を見るごとく学ばせてもらっています。物言えぬ者の声をどう聴くのか、動きや眼差しの中に、その答を探る日々でもあります。


2019.7.8 発行



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