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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

七夕の祈り

 保育園や小学校を訪問させていただくと、この時期は七夕かざりを目にします。子どもの字で短冊に書かれた願いごとは、どれもほほえましく、それを書いた子の姿まで想像してしまいます。ある小学校の生徒さんは、「ぼくの名前は読み方が難しいから神さまが読めないかもしれない」と、名前にふりがなをふっていたそうです。その話をして下さった先生の笑顔が、その子を思ういとしさにあふれていて、私も心が豊かになった気がしました。

 七夕の季節になると、私は一人のお母さんを思い出します。重い知的障がいをもつ女の子のお母さんでしたが笹につけられた短冊には、「一度でいいからお母さんと呼んでほしい」と、書かれていました。その方はいつも明るくてお子さんと一緒に遊び、ことばをかけ、お子さんのことば(声)に笑顔で応えていらっしゃって、本当にほほえましい親子として私の目には映っていたのです。

 その短冊を読み、その方の切なる願いを知って胸をつかれました。そして、私はそれまで、その方の表面だけしか見ていなかったことに気づかされたのです。けれども、そのお母さんの祈りにも似た願いは、その後も決して叶うことはありませんでした。彼女が日本語として、有意味語を話すことはなかったのです。でも、私たちの耳には聞こえないけれども、彼女はその「声」の中に「おかあさん」ということばを込めて母に呼びかけていたに違いないと私は思うのです。

 人工衛星やロケットのとぶ時代になっても星に願いを托す……それは、見えないもの、時空を超えたものへの畏敬でもあるのでしょう。七夕の夜、私も星を見上げて亡くなった母をそっと呼んでみようかなと思いました。

 皆さんはどんな願いをこめられたのでしょうか。


2013.7.9 発行



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