先日、ある方から忠告をいただきました。その内容は申し上げられませんが、私の生きる姿勢にもかかわることでした。
私の年齢になると、感謝のことばやほめことばをいただくことはあっても、まず、忠告や諫言はありません。言ってくれる友人はあっても、友人以外の人からそういうことばを受けることは、まず無いと言ってもいいでしょう。私より十歳以上お若い方ですが、今の私の生き方を言い得て、さすがだと思い、ありがたく思いました。
そのことがあって、私は短歌の師のことを思い出しました。宮中歌会始の選者もつとめた人物でしたが、非常に厳しい人でした。師は、短歌を態度の文字と考えておられましたから、作品は即ち生きる態度につながるものとされました。私は残念ながら一度も師にほめていただいたことはなく、推敲した作品を持って上京しても「ウーン、駄目だね。」と返されるのが常でした。
弟子に対する厳しさは、師自らが自分自身に課した厳しさでもありましたから、その生き方に学ぶことは、本当に多くありました。常に礼儀正しく、筋を通し、自分を律しておられましたから、不肖の弟子である私は、どんなに叱られたことか、思い出しても申し訳ないことばかりでした。
そんな師が亡くなって一年六ヶ月。私はいつのまにか傲慢になり、自分自身に甘い人間になり果てていたのでしょう。他人から見れば「お前、何様のつもりだ!!」といったところでしょうか……。子どもたちに良かれと思って、自分自身を自分の思いで縛りつけていたのかもしれません。いくつになっても、まだまだだなあと思いながら、忠告してくれる人のいる幸せを思いました。
あなたにも忠告してくれる人がいるといいですね。
2013.2.12 発行