山梨県甲州市の社会福祉法人「ぶどうの里」から毎月「ぶどうの里だより」という機関紙が届く。この施設の理事長の田ヶ谷雅夫先生は、私が大学卒業後に働いた国立の施設の大先輩である。「私には公務員は向かない!」と言って、わずか一年で民間施設に移った私が、次に田ヶ谷先生と出合うのは、皮肉にも大垣市職員となって、治療教育のレポートを提出した時だった。私のレポートに感想文が署名入りで返却されてきた時、人の出会いの不思議さを思ったものだが、それから三十年近くの歳月を過ごしたことになる。
私はもともと勉強が嫌いである。高校時代の恩師からは、「やれば出来るはずだ。」と、さんざん叱られたものであるが、この年になると逆に自分の力のなさを思い知らされ、勉強したいなあと思うから面白い。
先日も性懲りもなく三日間大阪に講義を受けに行った。知らなかったことを知る楽しみや、隣の席の人から他県の情報を聞く楽しみもある。何より、特別支援教育の「今」を知ることは、子どもたちの今だけでなく未来へつながるステップを模索することにもなり、つくづく時代が流れていることを感じる昨今である。
さて「ぶどうの里だより」であるが、「ひまわりからのメッセージ」と違い、良質な紙で写真も入った立派なもので、理事長通信も田ヶ谷先生のお人柄がにじんだ味わい深い文章である。福祉施策、宗教、芸術、行政へのちょっと辛口の提言まで巾広く、ここでも私は学ばせてもらっている。
一生の間に私たちが出会うことができるのは、ほんの一握りの人々であるが、その出会いにはきっと何か意味があるのだと私は思っている。子どもたちとの出会い、お母さん方との出会い、先輩や同僚との出会い……全てを大切にしたいものである。
2011.9.6 発行