全国各地で児童施設にタイガーマスクの伊達直人を名乗る人物からランドセルが送られているという。家庭の事情で買えない子ども達にとってありがたい贈り物であるとも聞く。
「ランドセル」ということばを聞くと、私の中にずっと針のように突き刺さったままの思い出が甦ってくる。
三十数年前のこと、双子の兄弟に出会いました。一人はこだわりの強い自閉症のお子さんでした。「先生、二人揃って地域の学校に行けますよね?二人一緒にランドセルを背負って学校へ行くのが私の夢なんです・・・・。」すがりつくようなお母さんの目に、私は告げた。「お二人一緒というのは難しいかもしれませんね・・・・。お子さんの事を考えると、下のお子さんは養護学校(今の特別支援学校)の方が良いと思うのです・・・・。」と。
その子達は当時4歳2カ月でした。
その日、お母さんは大声で泣きながら車を運転して、どこをどのように走ったかわからなかったと後に聞きました。私は、その時、「お母さんに告げるべき時は今だ」と判断したのですが、今でもお子さんの事を告げるべき時期はあの時点でなければいけなかったのだろうか・・・と自問自答しているのです。お母さんは「先生、あの時に言ってもらって良かったんです。私は就学先を迷わなかったから・・・。」と、私を今でも慰めて下さるのですが、何十年経っても、私の中で「なぜ、あの時に言おうとしたのだろうか・・・」という思いがあるのです。
お母さんたちの思いや願いを知りながら、それでも、今の時点でお子さんにとってよりベターだと思える選択を勧める時期は、私にとっても重い選択である。
子ども達一人ひとりが地域の中で大切にされながら育っていく未来を想像しながら、子ども達がどこで学んでも、必要な時に、必要な子に、必要な支援をして行って欲しい、していきたいという願いを私は持ち続けていくだろう。おそらく、これからもずっと・・・・。
2011.1.24