年度末になって学園の廊下で転び、右手首を骨折した。左手だけになると実にいろいろな発見がある。まず髪が結えない。チューブの歯磨き、化粧品は工夫がいる。バッグのチャックが止められず、足も使わないと出来ない。「大変ですね。」と言われるボタンかけやスプーンやフォークは特に困らないし、パソコンもそれなりに出来る。字は小学生のようだがまあゆっくりなら書ける。
こうして不自由さを体験してみると人間の体は実によく出来ていると思う。脳性まひの子どもたちはこういう不便さを日々過ごしているわけであろうし、姿勢が悪いと言って叱られている子どもたちはバランスがとれずに添え手を体の支えに使っている可能性もある。こんなふうに考えてみると、私が骨折したのも「もう一度体の機能やバランスについて考えてみなさい。」という神の声にも聞こえるではないか。よし、それならこの経験を次のステップに生かしてみよう。
卒園の季節である。子どもたちはそれぞれ新しい環境の中で新しいことに挑戦していく。子ども達が出来ない時に大人がどんなことばをかけていくのか、マイナスをプラスに変えていくのも人それぞれの価値観である。
2010.5.1 掲載