昨日、思いがけずドイツから一枚の布が届いた。贈り主は所鳳弘先生であった。先生は東欧やその近辺の国々の子どもたちに組み紐を教えていらっしゃることでも有名である。先生は20数年前、学園が肢体不自由児通園施設だったころに組み紐台を寄付し、園児たちに組み紐を教えてくださったことがあり、その時以来の御縁である。しかし今回のプレゼントは本当に思いがけないものであった。
黒い布に5ミリ位の小さな針目のクロスステッチで紋様がつけられ、それが縞をなし、クロスステッチの紋様の間間には別布でアップリケされた模様が細かく縫い付けられ、その1枚の布は芸術品として鑑賞出来得るものであった。その布がたとえ織物であったとしても、その細かな紋様に驚嘆したであろうが、それが手縫いであることに驚かされた。布はマケドニア西部の手工芸品で、ローマ時代からの技術ということであり、その紋様はシルクロードを東へ運ばれ、タイあたりまで伝わったそうである。
遠い異国の地で、おそらく女性たちが一針一針に様々な思いを込めて作ったであろうことを想う時、その美しさもさることながら、手作りの布の持つあたたかさが所先生のお気持ちとともに伝わってきて、心豊かな思いにさせていただいた。
子どもたちはどの子も豊かな感性の持ち主である。その豊かな感性を持つ子どもたちに対する時、私たち自身にも鋭敏な感性が要求されると私は思っている。そのために日常生活の中で、素晴らしい芸術作品や音楽などに接することに心がけたい、そして道端の小さな花に目を留める心を忘れたくないと思ったことであった。
2005.7.31 発行