某市の保育士さんの講演会に招かれた時のこと、会場からこんな質問が出た。
「私たちは発達障がいの子どもにパニックを起こさせないように常に寄り添って、その子の嫌がることはさせずに好きなことをやっているのですが、どうしてもパニックを起こすことがあります。どうしたらいいでしょうか・・・?」と。
私は会場にいる子持ちの保育士さんに尋ねてみました。「皆さんは自分のお子さんが泣いたりひっくり返ったりすれば、欲しがるものを買い与え、何でも好きなことをやらせてきましたか?そうして子育てしてきた方は手をあげてください。」当然のことながら会場で誰も手をあげる人はいなかった。
「皆さんは、自分の子どもには我慢することや気持ちを切り替えていくことを教えるのに、どうして発達障がいの子には、何でも好きなことをさせるのですか?そんなに子どもたちは分からない子でしょうか?私たちは、子どもたちが今後何でも思い通りになる社会を作っていくのですか?何でも思い通りになる社会はあるのですか・・・?」と。
パニックにも色々ある。相手の言っていることが理解できないためにパニックを起こすのであれば、それは私たちの責任であり、子どもたちにどうしたら理解させられるかを工夫すべきである。しかし、「大声を出して暴れれば自分の思い通りになる」という学習を子どもにさせることは慎むべきではないだろうか。パニックになったとき、またパニックを起こす前に、どのように気持ちを切り替えさせていけばいいのかを考えるのが療育、保育のプロであって、将来のことを考えず、好きなことをやらせ、自分の要求が全て通るという学習をさせてその場限りの責任逃れをしていくことは許されないと思うのである。
最近、愛情を持って子どもと向き合い、真剣に叱ることが出来る大人が少なくなったと感じている私である。
2009.11.30 発行