先日、台湾に出かけました。台湾は第二次世界大戦が終わるまで五十年にわたって日本の統治が行われたところです。高齢の方の中には短歌を詠む方も多く、私は中部日本歌人会のメンバーとともに国際交流ということで出かけたのです。
台湾では、蔡焜燦(さいこんさん)という方に会いました。彼は司馬遼太郎の『街道をゆく』に老台北(ラオタイペイ)として出てくる人物で、台湾歌壇の重鎮であり、日本でも『台湾人と日本精神』という著書もあって、知る人ぞ知る人物です。彼は著書の中で「日本の統治下での最も大きな業績は教育である。他国の統治、つまりイギリスやスペインなどの植民地の人々は教育を受けることはできなかったが、日本の統治下での台湾では教育によって識字率は非常に高かった。」と書いています。そして、日本の今を憂い、「日本人は胸を張って、もっと誇りを持ってほしい。」と言われたのが印象的でした。私は政治のことに疎い人間なのですが、反日感情ではない親しさをもって迎えられたこと、中国本土と違って漢字の略字がないことに、正直驚いたのでした。
蔡焜燦さんと話して感じたことは、教育というものは深い愛情の裏打ちがあってこそ成り立つものだという事でした。それは療育の現場でも同じことなのであって、一人の子どもが生きていくための「今」をどうしていくのか、子どもの発達の半歩先、一歩先を常に見通しながら私達は進んでいくのであって、今、問題なくやり過ごせばいいなどというものでは決してないのです。いたずらも反抗もパニックも無くせばいい、 起こさせないようにすればいいというのではなく、子ども自身がそういうことを通して自分自身をコントロールしていく力をつけていけるように導いていくことが大人の役目だと思うのです。
2008.2.29 発行