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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

季節はずれの訪問者

 令和三年の新春を迎えましたが、コロナ禍の中、今年は今までとはちがったお正月だったのではないでしょうか。

 我が家も皆が揃って、ゆっくり食事をすることもなく、孫たちは顔を見せただけで早々に引き上げて行きました。

 夫婦二人の寂しい日々と思っていましたら、思いがけなく珍しい訪問客がありました。実は、十三日は、私の大切な友の立ち日だったので、長い交友の日々を思い出して過ごした一日だったのですが、その夜、二階の寝室に上がろうとして、ふと、キッチンの床の上の三角のものが目に止まりました。こんな所にごみが落ちていると思って拾おうとしました。しかし、やわらかな感触に思わず手を引っ込めてしまいました。よく見ると紋白蝶でした。もう死んでいると思ってティッシュですくい上げてみると、かすかに触角を動かします。この寒い冬に、一体どこから迷いこんで来たのでしょう。飛ぶ力もなく翅をたたんで横になっているのですが、確かに生きています。周りは花がなく、仕方がないので花びんに活けた菊の葉の上に置いてやりました。

 さて、こうなると、蝶が気になって寝室には行けません。結局、二時間をキッチンで過ごす羽目になりました。

 蝶は動きません。翅は立てられないのかもしれません。人が触れることは良くないのかもしれないと思いつつ、体を起こしてやりました。すると、やっと動き出しました。そして飛ぼうとするかのように二度三度翅をふるわせたのですが、また横になってしまいました。私には、紋白蝶が友の仮身のようにも思われて翌朝、どうしたかなあと探してみると、葉の上でなく、茎につかまっています。少し元気になったということです。レタスの葉を用意してみたり、朝夕、蝶の小さな命にかかわりながら、コロナの患者さんのために働いて下さっている医療現場の方々に思いを馳せました。おそらく、医療現場の方々は患者の皆さんの命を守るために必死に闘っておられるに違いありません。迷い込んで来たこんな小さな命でさえ助けたいと思うのです。人の命であればなおさらのことでしょう。

 コロナ禍で心がふさぎがちな日々ですが、決してあきらめずに、この紋白蝶の小さな命ががんばって生きようとしている姿に励まされる思いでいる私です。明るい日の来るのを祈りつつ……。


2021.1.18 発行



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