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ひまわりからのメッセージ

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人間の分際

 本屋さんをのぞいて、曽野綾子さんの『人間の分際』という本の題名に惹かれて読んでみることにしました。 
 
 その中に、東京オリンピックに関して書かれた文章がありました。東洋の魔女と呼ばれた日本の女子バレーボールチームの監督であった大松さんの「成せば為る」ということばに対して「人間の世界には、どんなに為そうとしても成し得ないことがある。その悲しみを知るのが人間の分際であり、賢さだろう。」と書かれていました。折しもリオオリンピックの年です。さて私たちはオリンピックに対してどんな態度でのぞむのだろうか……と考えさせられたことでした。

 ところで、先日、予想だにしなかった事件が起こりました。相模原の施設で起きた事件は、本当に衝撃でした。今年は、「障害者差別解消法」が制定されましたが、そもそも差別や偏見が存在するからこそ作られた法律です。

 相模原事件を知って私は三十数年前に聞いたことばを思い出しました。障がいをもつ吾が子を手にかけて死なせてしまった親さんに対して情状酌量が求められることが多かった時代のことです。脳性小児まひであったその人は、障害者差別とたたかっていましたが、「ぼくたち障害者は、障害があるからという理由で、親の手にかかって、喜んで命を落とさなければならないのでしょうか……?」と、言われたのでした。今も忘れることのできないことばでした。では皆さんは、そのことばの重みをどのように受け取られるでしょうか。

 相模原事件の加害者は、どんな気持ちでいたのでしょうか。自分が神にでもなったつもりだったのでしょうか。

 恐怖、衝撃、痛みや悲しみ、憤り、苦しさ、不甲斐なさ等々、私たちは様々な思いを抱いてこの事件に向き合いましたが一人の人間の間違った思想があんなことをしたのだと言えるでしょうか。本当は、一人一人の内なる問題として、真剣に向き合うべきなのではないでしょうか。

 「分際」とは、身のほどを知るということです。自分の身のほどを知ることは、なかなか難しいものだと思うのです。


2016.8.10 発行



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