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ひまわりからのメッセージ

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雪からの贈り物

 今年の冬は雪が少なく、このまま春になるのかと思っていた矢先、雪になりました。

 わが庭の柿は例年になくたわわに実りましたが、ひよどりの姿もなく淋しく年を越しました。ところが、この雪で一変。雪が積もったとたんに鳥たちがやって来て、二、三日の間に柿を一つ残らず食べ尽くしていきました。早朝から仲間を呼ぶ鵯の声が冬の気の中に吸い込まれていくようでした。

 ちょうどその頃、東濃の保育園の保護者会から講演の依頼を受けていましたので、電車で出かけました。園長先生が迎えに来て下さって山間の園まで山道を走りました。西濃の山々は針葉樹が多く、雪が降っても山肌が見えることはありません。もちろん私は木々に
積もった雪や、花が咲いたかのように見える白い枝の光景をいつも美しいと思っていますが、東濃のその園から見える山々は広葉樹が多いのです。冬の木々は全て葉を落として疎林となった山肌に雪が白く残り、そこに射すやわらかな日の光に輝いて見えました。私はその景にしばらく立ち止まってしまいました。

 次の日、帰宅して槙垣の傍を通りすぎようとした時です。消え残った雪の間からバイオレットの甘い香りが立ちのぼって来たのです。よく見ると、雪の間から匂いスミレの可憐な花々が姿を見せていました。雪のない時には摘み取って鼻に近づけないと、その香を楽しむことはできないのに…。

 これらのことは、全て雪からの贈り物に思えました。

 忙しく日々を送っていても、その間に心を安らげてくれる風景や小さな花の命に出合って、いやされている自分を感じています。季節の移ろいを肌で感じられることも幸せなことだと思うのです。


2016.2.8 発行



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