松本さんは、大垣消防組合の消防職員時代から、玉すだれのほか、腹話術やマジック、紙芝居など多種多様な芸を取得。手作りの道具を持って小学校や保育園などを回って防火を呼び掛けてきた。仕事の傍ら、頼まれて1983年に「大垣腹話術研究会」を立ち上げ、腹話術や手品、玉すだれの芸を指導してきた。現在も原則として毎月第1、第3木曜日の夜、大垣市中川地区センターで指導を続けている。習っているのは、大垣市内だけでなく、岐阜県海津市や滋賀県長浜市の人もいる。親子もいる。腹話術の人形や手品の仕掛けづくりを習っている人たちもいる。みんな真剣でしかも楽しそうだ。腹話術の人形をつくっていた女性は「楽しい。これは世界に一つだけの私の人形です」とうれしそうに語っていた。
「ふるさと大垣おもてなし隊」は、松本さんに指導を受けている観光ボランティアなどの仲間が昨年春に結成した。現在のメンバーは60歳代〜70歳代の男3人、女6人。大垣市中心部を流れる水門川で春と秋に開催されるイベントの「たらい舟」や「舟下り」に合わせて、同市船町の「奥の細道むすびの地記念館」前広場で、イベント期間中の土曜日に観光客に玉すだれや腹話術、手品などを披露している。施設訪問はかわなみ作業所が初めて。
松本さんが腹話術や手品などを始めたのは、消防本部予防課防災広報係担当となった1975年ごろから。その当時、同消防組合管内の火災の原因のワースト3が子どもの火遊びだったことから、火遊びの危険を子どもたちに分かり易く伝えようと、小学校や保育園などを回って紙芝居を披露するようになった。紙芝居は、子どものころから好きだった絵やものづくりを活かしてオリジナルなものを制作した。その後、手品、腹話術も学び、防火啓発に励んだ。紙芝居だけでなく、腹話術や玉すだれの道具も自分でつくった。
2月21日のかわなみ作業所には、松本さんら5人が訪問。最初に松本さんが、大垣市のマスコットになるようにと制作した人形の「ばしょうくん」を使い腹話術。「大垣市のマスコットキャラクター、おがっきぃはお話ができませんが、ばしょうくんはお話ができるのですよ」などと、みんなの心を和ませる話をしながら芸を発表した。続いて全員で「大垣無双玉すだれ」の披露。歌詞には大垣市ゆかりの地などの言葉が織り込んである、松本さん作詞の同市独自の玉すだれだ。全員が手作りの玉すだれを自由に操り、歌詞に合わせて伸ばしたり元に戻したりした。揖斐川や伊吹山、大垣城などの大垣市ゆかり歌詞が出てくるとホールのみんなは大喜び。帽子や箱の中から卵やシルクの布が飛び出す手品もあった。
西美濃他方だけでなく、依頼を受けて県内各地で芸を披露している松本さん。「楽しいからやっている。元気なうちは続けたい」ときっぱり。
2019.04.01(子林 光和)