大垣市文化事業団が誕生したのは1994年春。2年前には、陶芸用の窯もある実習室や創作室、学習室、さらに音楽堂、アートギャラリー、コスモドームなどを備えた7階建ての学習館が建設され市民の学習熱は高まっていた。そんな市民に、すぐれた芸術文化の提供、地域の芸術文化の継承と活動支援、芸術文化に夢をいだく子どもの育成を目的に設立されたのだ。初代と2代目理事長は現職市長が兼務。2006年春からは市教育長を歴任した子安一徳さんが3代目理事長として10年間務めた。4代目が元大垣市立赤坂小学校長の早崎さん。
初の女性理事長で、かつて同市教育委員会の文化振興課主幹も務めた早崎さん。文化事業団に席を置いたこともある。それだけに周囲の期待も大きい。歴代戸田藩主の一貫した文教尊重の施策から発展、継承されてきた大垣市の市民文化。明治になってからは『博士のまち』とか『鉄道の大垣』とも言われた文教都市・大垣。早崎さんは「先輩たちのたゆまぬ努力が現在の大垣市の文化をしっかりと守り育ててきた」と先人を称える。「さらに、学習館が建設され、市民の生涯学習への思いは強まった」と分析。「大垣市の宝でもあるスイトピアセンターを多くの市民に利用してもらうことが私たち文化事業団に働く者の使命でもある」と語る。そのために、施設の特徴を活かした事業、体系的な事業など、事業の充実と弾力的な施設運営▽多様な財源の確保や企業との連携など、経営基盤の確保▽文化連盟など、関係団体との連携強化や仕事に誇りを持つ専門集団の事務局など、社会の変化やニーズに合わせた組織づくりに取り組んでいきたい、という。職員には「施設を利用する市民の立場になって工夫や企画を。市民が利用したくなる施設に」と、呼びかける。
学習館や文化会館、郷土館など、事業団が指定管理を受けている文化施設では、市民のための▽音質の良い音楽堂を使った年3回のプライムコンサート▽ベルギーの著名な画家の作品を集めた「ポール・デルヴォー版画展」▽未来の博士を育てる科学教室など、数多くの自主事業を展開している。3月4日と5日には市民創作劇「わが街大垣」の公演も。
子どもが好きだから教師の道を選んだという早崎さん。22年前からは教職の傍ら大垣少年少女合唱団の指導者を務め、校長を退職した12年前からは同合唱団の団長も務める。子どもたちへの思いは熱く「音楽や絵画など、文化や芸術はすぐには結果が出ない。日本や世界にはばたく人材を育てるには文化、芸術環境を整えてやらなければならない。豊かな心、温かい心をもった子どもたち一人ひとりが大垣市の文化芸術発展の担い手となってくれるような支援をしていきたい」と、語る。期待したい。
2017.03.01(子林 光和)