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巨大二枚貝の復元模型を展示する「大垣市金生山化石館」の館長、高木 洋一さん(67)


「新しいことを知ることは楽しい」
と語る高木洋一さん
 「日本の古生物学発祥の地」と呼ばれる岐阜県大垣市赤坂町の金生山。学術的にも歴史的にも貴重な山だ。保存の良い多種多様な化石が見つかることから、化石愛好家のあこがれの場所でもある。その金生山で化石が発見された、史上最大と言われる約2億6000万年前の巨大二枚貝「シカマイア・アカサカエンシス」の実物大復元模型が今年夏に完成し、金生山中腹にある「大垣市金生山化石館」で常設展示されている。シカマイアは、古生代ペルム期中期の熱帯サンゴ礁の浅い海に生息していたが、気候の寒冷化で絶滅したとされる。化石館の館長に就任して7年目の高木洋一さんは「世界一と呼ばれる巨大な二枚貝の化石が金生山で見つかったことは、赤坂町だけでなく大垣市の誇り。このシカマイアの化石には、赤坂の名前が付いており、赤坂の名前を多くの人に知ってもらえることにつながるのでは。多くの人に来館し、シカマイアの復元模型を見てもらいたい」と、期待する。


実物大に復元された
「シカマイア・アカサカエンシス」=大垣市提供
 大垣市の北西部に岩肌を露出する金生山は、掘削前の最高標高217.1メートル、東西1キロ、南北2キロの小高い山。古生代の終わりごろ(約2億6000万年前)、赤道直下に存在したサンゴ礁が起源。海洋プレートの動きで運ばれて隆起したとされる。全山の90%以上が生物石灰岩からできていて、フズリナ、ウミユリ、サンゴをはじめ、貝類や石灰藻類など保存の良い多くの化石を含んでいる。同時代の他地域と比べて大型のものが多い。


シカマイアの化石をながめる見学者
=大垣市金生山化石館
 シカマイア・アカサカエンシスの化石は、赤坂石灰岩層4層のうち、最も古い下層部で1968年に発見された。発見した人が恩師の名前と地名から名付けた。復元模型は、長さ1.2メートル、幅27センチ、高さ18センチ。流線型の独特な形をしている。発見された化石は断片で、全体像が不明だったが、筑波大学院生の安里開士(あさと・かいと)さんが断片の標本をつなぎ合わせるなどして形を突き止めた。安里さんの監修で大垣市教育委員会と金生山化石館が樹脂で模型を完成させた。模型の完成に合わせて、貝類化石に詳しい国立科学博物館の加瀬友喜博士は「世界で初めてシカマイアの全体像が明らかになった。この巨大二枚貝の生態や絶滅の謎が解明されることを期待している」と、コメントしている。9月11日には、安里さんを招いて「化石講演会」が開かれた。安里さんがシカマイアに関する研究の歩みと成果について復元模型を使って話すと、会場の人たちは熱心に聞き入っていた。


大垣市金生山化石館
=大垣市赤坂町
 「金生山化石館」は、1964年に赤坂商工会が中心になって金生山の山腹に建設。1985年に現在地に新築移転した。1996に大垣市に建物や標本などが赤坂商工会から大垣市に移管された。現在、化石など約200種8000点以上を収蔵、約100種600点を常設展示している。金生山化石研究会の事務局長も務める高木さん。「名前は知っていても、現物は見たことがない化石を発見した時の喜びは格別。新しいことを知ることは楽しい。子どもたちにも、自分の目で見て観察、採集をして本では体験できない、手触り、匂いなどを感じてもらいたい。カメラ撮影ではなくスケッチをして」と、熱いメッセージを送る。
 大垣市金生山化石館の開館時間は午前9時〜午後5時。休館日は火曜日(祝日の場合は翌日)と祝日の翌日、年末年始の12月29日〜1月3日。入館料は一般100円、高校生以下無料。20人以上の団体は半額。電話0584-71-0950。
2016.11.01(子林 光和)

今回の西美濃な人

高木 洋一(たかぎ よういち)

 岐阜大学教育学部生物科卒。理科教師として岐阜県多治見市立小泉小学校や大垣市立西中学校、興文小学校などで教壇に立つ。大垣市立静里小学校長も歴任。西中時代には理科のほか、音楽も担当した。金生山化石研究会の創立当時からの会員。会員たちと共著の「金生山 その文化と自然」「金生山の記録」などの著書がある。「金生山がフィールド」と語り、巻貝や化石を追っていることが趣味で「楽しいこと、好きなことをしているのが私の健康法」とほほ笑む。岐阜県垂井町で妻と長女夫妻、孫3人の7人暮らし。


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