子供のころから花が好きで「花を育てたい」という夢を持っていた青木さん。学生時代のアルバイトも花屋が主だったという。20歳の時には、ヨーロッパに45日間の旅をして花を見てきたという。そんな青木さんがバラ苗の生産を始めたのは29歳の時。東京農大で造園学を学び、造園会社とシンクタンクで計6年間働いたあと、故郷の大野町に戻ってから。畑の隣の人がバラ苗を育てていたのがこの道へのきっかけとか。元々花が大好きな青木さんは野菜や果樹、コメなどの栽培とともに、10アールの畑でバラ苗の生産に取り組んだ。
青木さんは、野バラ(ノイバラ)の実生台(種子をまいて1年育てたもの)に接ぎ木をして苗をつくり、温室で丈夫な苗に育てて販売している。10年ほど前までは切り花用が中心で、1種類に100〜1000本の注文があったが、外国からのバラに押されて切りバラを販売する業者が少なくなり、最近はガーデン用がほとんど。1種類20〜30本の注文で多品種の生産が求められるようになった。このため、現在は60アールの畑で300種類以上のバラ苗を年間約8万本生産、販売しているという。品種改良にも積極的に取り組み、これまでに10種類の新品種をつくりだしている。このうち、▽香りが良く上品な藤色の花を咲かせる「夜来香(イエライシャン)」▽真っ赤な花の「ローズオリ」▽香りが良く薄紫色の花の「亜欧(アオ)」の3種類を新種登録している。いずれも丈夫で育てやすいという。特に「夜来香」は、2013年に新潟県で開催された「第6回 国際香りのバラ新品種コンクール」の背丈の高いハイブリッド・ティ部門で最高賞の国土交通大臣賞や新潟県知事賞などトリプル受賞に輝いた。
バラ公園は1997年の開園。バラまつりはそれを記念して始まったもので5750平方メートルの敷地に国内外のバラ約150種2000本が植えられている。早咲きから遅咲きまでの品種がそろっており、期間中には同町内のバラ生産農家が品種改良したバラなど、色とりどりの花が咲き、色や形、香りを満喫することが出来る。まつり期間中に5〜6万人が訪れるという。青木さんは、一級造園施工管理技士、一級土木施工管理技士の資格も持ち、自宅と温室の間の畑には100種類100本のバラが植えられ、ローズガーデンとなっている。
岐阜県指導農業士として、後輩の指導にも当たる青木さん。「バラ苗の生産は奥が深い。難しい。何とかつくれると思えたのは10年ほど経ってから。品種も何万種類あるか分からない。世界で毎年、新種が生まれている。自分が思った新種が誕生した時は最高」と話す。そんな青木さんに昨年から、頼もしい助っ人が加わった。岐阜県立国際園芸アカデミーで学んだ三女の沙謡さん(24)がバラ苗生産の仕事を手伝ってくれるようになったのだ。沙謡さんが働く姿をそっと眺める青木さんの顔は幸せそうだ。
2015.04.01(子林 光和)