多良ふれあい天文台は2012年4月のオープン。10年5月に多良小学校で開催された天体観測会に講師として参加した「宇宙教育の父」とも呼ばれる宇宙航空研究開発機構(JAXA)の的川泰宣名誉教授が天体環境に適した環境に感動して、多良地区に口径20センチの反射式天体望遠鏡を寄贈したのがきっかけで建設された。地元住民たちが「多良天文台建設委員会」を結成。市から校庭の南西一角78平方メートルを借り、週末に土木作業や大工、板金などさまざまな仕事のノウハウを生かして造成、建築するなどして約1年がかりで完成させた。天文台は縦3メートル、横3.6メートル、高さ3メートル。星空が見えるように全開式屋根。吉田さんは「多良地区は養老山地と鈴鹿山脈の山に囲まれた盆地で、街の明かりがシャットアウトされ、気流も穏やかで星も揺るぎが少なく見ることができる数少ない場所。自然も豊かで街と比べて見える星の数は圧倒的に違う。冬は特にきれいに見える」と、絶賛する。
「多良星空クラブ」(木村弘会長)は天体観測が好きな人や、ふれあい天文台の建設に携わった人たちなどで結成。天文台が建設されたのに合わせて毎月第3土曜日の午後7時半から星空観察会を開いている。多良小校区だけでなく、口コミで知った子供や親子連れらが参加。吉田さんら会員や小学校の教師などの天体愛好家から星座や星団、月、惑星などについてスライドなどで説明を受けた後、天体望遠鏡をのぞいて星空を観察している。スポーツ少年団が終わった午後9時過ぎに参加してくる子供もいて、観察会は午後10時過ぎまでになることもある。観察会は、定例だけでなく中秋の名月や皆既月食などの日にも開かれる。多良小児童を対象にした観察会もある。昨年10月8日の皆既月食の日には大垣市と共同で観察会を午後5時から開催。町内だけでなく、広く大垣市や各務原市、名古屋市など県内外から計約50人が参加した。午後6時10分ごろに東の養老山(標高859メートル)から出た月が欠け始めると、吉田さんたちの実況を聴きながら望遠鏡にかじりついていた子供たちから「欠けてきた」「見られて良かった」などの声が次々と沸き起こった。
小学校4年生の時に学校の図書館で見た図鑑から星の美しさに魅せられた吉田さん。自分の目で見てみたいと新聞配達をするなどして望遠鏡を購入し、星空観察を始めたという。今でも本やインターネットを通して天体に関する勉強をしている。観測会の後は、仲間たちと深夜まで星をながめているとか。「子供たちも星に興味を持ってきてくれるようになった。自分で本を読むなどして勉強している。観察会でも『この名前の星はどこにあるの』などと積極的に質問してくる。それにきちんと答えられるように、こちらも本を読みまくって勉強しなくては」と、明るくうれしそうに話す。
2015.01.03(子林 光和)