西濃運輸野球部は1960年創部の古豪チーム。かつては都市対抗野球の常連で「東海の暴れん坊」と呼ばれた。白獅子旗(準優勝旗)や黄獅子旗(ベスト4)も獲得している。だが、一昨年、昨年と本大会出場を逃がした。それだけに、チーム関係者だけでなく、大垣市民ら西濃ファンにとっては東京ドームへの思いはひときわ強かった。そんな中、今夏の東海地区2次予選を4戦全勝で勝ち進み、19年ぶりの第一代表で3年ぶり33回目の本大会出場を決めた。その勢いは東京ドームでも発揮された。過去に優勝7回の強豪・東芝(川崎市)に初戦で逆転勝ちすると、準決勝戦では3連覇を狙ったJX-ENEOS(横浜市)も撃破。決勝戦では富士重工業(太田市)に佐伯尚治投手の踏ん張りで完封勝ちし、栄冠を手にした。準決勝の日は、32年前に亡くなった西濃運輸の創業者・田口利八さんの命日。決勝戦は天皇・皇后両陛下が観戦され、西濃ファンには忘れられない優勝となった。
「派手さはなくてもひたむきにやる」が持論の林さん。一昨年夏に4回目の監督に就任してからは、厳しい練習についてこれる体力づくりと、自らが考える野球を推し進めた。さらに、野球選手である前に社会人、西濃運輸社員としての心構えを説いた。その林さんが追い求めた野球が今夏、見事に開花した。東海地区2次予選から粘っこい野球、つなぐ野球に徹してきた。それが東海地区2次予選初戦の延長戦となった三菱自動車岡崎(愛知県岡崎市)や東京ドームの初戦・東芝との戦いで顕著に表れ、本大会では本塁打なしで優勝という歴史的な勝利を収めた。また、林さんは「西濃運輸野球部は西濃カンガルー会をはじめ、多くの市民に愛され、応援していただいている」と話し、スタンドの市民と一体となったチームづくりを目指してきた。それは、市民にとっても肌で分かるだけに、岡崎市での東海地区2次予選だけでなく、本大会でも市民応援バスなどで多くの市民が東京ドームに駆け付けた。決勝戦では1万1000人のファンが黄色い団扇を振りながら声援を送り続けた。大垣市役所で開催された写真展「黒獅子旗への軌跡」(8月29日〜9月12日)には連日多くの市民が見に訪れた。写真展では黒獅子旗なども展示され、注目を集めた。
9月の「第一回フランス国際野球大会」にも日本代表として参加した西濃運輸。来年の都市対抗野球大会の出場権を推薦で獲得している。だが、来年は補強選手はいない。単独チームで戦わねばならない。林さんは「現在いる選手の能力を底上げするとともに、来春入部の新しい戦力で2連覇を目指す」と、気を引き締める。
2014.10.01(子林 光和)