清水さんは「当初は長い間従事しなければならないと思ったが、終わってみるとあっという間でした。中央の有名大学の著名な学者を招かずに地元の研究者で市民手作りの市史を作ることができた。多くの人の協力と若い研究者の努力で新しい地方史編さんのモデルを示せたと思う。市民の愛郷心が市史に反映して市民に愛着ある市史になることを願っています」と、満足そうに話す。
「歴史が好きだったし、大学の卒論を書くために古文書を読んだのがきっかけで古文書を読む喜びを味わった」という清水さん。これまでに岐阜県史編集室に通算15年、岐阜市史編集室に発足当時の3年、そして今回の大垣市史編さん室に11年と合計29年間勤務、岐阜県史と両市史計45巻の刊行に携わってきた。このほか、美濃地方の地方史の執筆や古文書講座、歴史講演会などの講師を務め、古文書解読の人材育成、市民の郷土愛育成に尽力してきた。
特に1966年4月にスタートした岐阜県古文書読解講習会の講師は半世紀近く継続しているほか、16年続くふるさと大垣歴史観光講座などの歴史講演会は年間80回を超える。古文書や古記録などに基づく講演は人気が高く、多くの「ファン」がいて毎回、清水さんの講演を聴きに訪れている。
今回の大垣市史編集に当たっても清水さんたちは「為政者の歴史でなく、その時代に生きた庶民の立場から見た歴史資料を提供し、日本史研究に貢献する」「執筆者と編さん室員は将来の地方史研究の人材育成のために若い研究者とする」「市民に親しまれる」などをコンセプトに取り組んできた。その結果について、3月末に開かれた大垣市史刊行記念シンポジウムでは、パネラーから「岐阜県史や岐阜市史を補完できる」「西美濃の歴史を知る上で貴重な資料」「使い手の立場に立って編集されている」「資料編に索引、コラム、解説を付けたことは、今後の他市町村史編さんの模範となる」などと高く評価された。さらに、収集した段ボール箱100箱以上の資料の保存と活用や新たな史料の調査など歴史研究の継続について意見が交わされた。
3月末で大垣市史編さん室長を終えた清水さん。市史編さん室長以外にも大垣市文化財審議会委員や各種文化団体の役員を長年務めてきた。これらの功績に対して大垣市は4月1日、市功労章を贈ってたたえた。
清水さんは「古文書を読むことで史実の新発見や庶民の生活を知ることができる。一人でも多くの人にふるさとの歴史と文化に関心を持ってもらえればありがたい。若い研究者が育ってきているが、健康なうちは歴史講座や講演会を続けていきたい。歴史の語り部として話せる場を与えていただけるだけでうれしい。歴史研究を生涯の仕事として継続していきたい」と静かに語る。
2014.05.01(子林 光和)