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大垣つれづれ

  • 永井豪さんの死を悼む
永井豪さんが亡くなられた。6月半ばのことである。岐阜新聞に長く勤められ編集委員・論説委員であった。享年66。ふだん「ごうさん」とお呼びしていたが、「たけし」が正しい読みである。新聞社での定年のあと、ぎふチャン報道部に移られ、現役としての早すぎる死であった。中津川が生んだ傑出した木工家、早川謙之輔さんが2005年に亡くなったとき心の籠った追悼記事を書かれ、「67歳と言う若さでの急死が惜しまれる」と記されたのが、そのままご自分のことになってしまわれた。私が永井さんに初めてお会いしたのは東京である。三絃の西澤昭子さんの現代邦楽研究所の発表会だった。このとき永井さんは東京支社編集部長というポストだったが、今度岐阜に戻ると言われたから1997年のことである。岐阜生まれの私も定年のあと大垣に行くと決っていたので話がはずんだ。永井さんは西澤さんのパートナーである写真家の竹内敏信さんの関係で来られたのだし、私は西澤さんの友人で日本の伝統音楽の研究者である上越教育大の茂手木潔子さんのお勧めで伺ったので、永井さんを紹介されたのも茂手木さんだったと思う。
永井さんはジャーナリストとして環境問題にひとかたならぬ関心をお持ちだったが、それはバックミンスター・フラーの宇宙船地球号のスケールのもので、それが良く発揮されたのは、1998年の前半期6ヶ月、岐阜新聞に断続的に連載された「ぎふ海紀行」であろう。国連の国際海洋年に合わせての企画だったが、海なし県の岐阜にあえて海を見るという発想は永井さんならではのものだ。これは12年後、2010年に関市で開催された全国豊かな海づくり大会に合わせての取材班を率いての半年間連載「ぎふ海流」の企画へと発展し、「山と海のつながりを具体的な根拠で明らかにした」などとして第26回農業ジャーナリスト賞を受賞している。永井さんはお仕事を本にまとめられるのも巧みで、このぎふの「海」についての二つの企画はともにそのままの題名で岐阜新聞社から書籍化されている。中津川支局長時代には『恵那山と生きる』があるが、しばらく下呂支局長をされていると思ったら、いつのまにか『清風下呂年表』が出来ていて、私のような怠け者は反省させられるばかりだった。
永井さんの最後の本になった『海馬島脱出・子どもたちの敗戦記』(まつお出版2016年)では、樺太の西海岸に浮かぶ小島に取り残された住民たちがソ連軍の侵攻と敗戦の混乱の中、必死で自力脱出を図った状況と、海の幸、山の幸に恵まれた楽園だったそれまでの島の生活とを、膨大な資料の探索と、いまは老境にある当時の子どもたち大勢への取材とで描き出し、時代の流れに翻弄される庶民の生をあざやかに浮びあがらせている。永井さんの筆はこのような災禍を扱っても変わらず穏やかなものだが、その底には旧恵那郡坂下町が国策で満州に分村を拓き、同じくソ連侵攻でたくさんの犠牲者を出した悲劇の取材の思い出が重なっていよう。永井さんがこの本の制作を思い立ったのは、今は岐阜市に住む、かつて海馬島に暮らした一女性の体験談がきっかけであった。「一つの村が消えた」、それが忘れ去られ無に帰すことがあってはならない、その「生きた証し」を残さなくては。これが永井さんがあとがきに記す使命感であり、それを果たされた永井さんは彼岸でほっとしておられることだろう。ご冥福を心からお祈りしたい。
2017.8.28

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