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水との闘いの歴史を伝え継ぐ「大垣市輪中館・輪中生活館」館長、長谷川 章さん(62)


「防災や減災について考え、
行動してほしい」と、
話す長谷川章さん
 「水の都」「水都大垣」と呼ばれる岐阜県大垣市。おいしい水が地下から湧き出しており、水とともに発展してきた。その一方で、大垣市をはじめとする濃尾平野の西南地方は、常に洪水に見舞われるなど、水との闘いの歴史だった。そんな地域に住む人々が水との闘いの中でつくり上げたのが「輪中」。同市入方の「大垣輪中館」は、輪中の成立とその暮らしを分かり易く解説・展示した施設。今年も西日本豪雨などで多くの犠牲者が出た。2年半前から館長を務める長谷川章さんは「輪中地区に住む先人がどういう取り組みや努力、営みをしてきたかを知ってほしい。防災や減災は過去のことでなく今もそして未来、将来につながること。どうすれば良いか考え、行動してほしい。ぜひ来館を」と、呼びかける。


資料と模型などで輪中について
解説・展示した「大垣市輪中館」
=大垣市入方
 「大垣市輪中館」のオープンは、1992年。輪中の景観が今も残る日新地区の地区センター2階に設けられた。館内にには、「空から見る大垣輪中」「ジオラマとビデオによる輪中景観の紹介」「輪中民家の模型とテープによる解説」などがある。近くには、輪中館の一体的な施設「輪中生活館」がある。同市が、輪中館で学んだ輪中の様子を実感できるように、輪中地域の典型的な民家を復元して1997年に開館させた。洪水時に下して使う「上げ舟」もある母屋、洪水時に避難できるように盛土された住居式水屋、土蔵式水屋、納屋、門のほか、屋敷の西側には暴風や洪水から家を守る防風水林もある。輪中館や輪中生活館では、年間を通して輪中講座や水まんじゅうづくりの体験教室などの自主事業も実施している。


輪中地域の民家を
復元した「輪中生活館」。
盛土された水屋もある
 7月28日には、小学3年生以上の子どもと保護者を対象とした「夏休み体験教室『輪中博士になろう〜大垣輪中めぐり』」が開かれ、同行させてもらった。あいにく台風12号が東海地方に接近していたが、親子連れら約25人が参加。バスで輪中や治水に関する史跡や施設を巡り、輪中と治水の歴史や先人の業績を学んだ。最初に訪れたのが、今も水屋が数多く残る「釜笛の水屋群」。参加者たちは、大垣輪中研究会の会員から水屋や上げ舟などについての説明を受けると、熱心にメモをしたり写真撮影するなどをしていた。輪中堤決壊碑や決壊してできた池・押堀(おっほり)、切割、水防倉庫などがある曽根地区、大井排水機場(古宮町)も巡った。排水機場では、市の治水課職員が排水機場の役割や市内にある排水機場、治水対策などについて説明。参加者からは「どのくらいの雨が降れば稼働するのですか」などの質問も出された。輪中館では輪中や治水への関心を高めるために、小学4〜6年生から「輪中ポスター」の作品募集もしている。作品は輪中館などで展示する。


大垣輪中研究会員(右)から
水屋の説明を聞く参加者
=釜笛の水屋群
 大垣市輪中館や輪中生活館には、一般市民や治水の研究者などのほか、学校で「ふるさと大垣」について学ぶ大垣市内の小学生たちもたくさん訪れる。そんな子どもたちに対して長谷川さんは「先輩たちの水との闘い、水とのかかわりなどの歴史を学ぶとともに、恵まれた水を大切にして発展してきた郷里への誇りも持ってほしい」と、アドバイスする。
 大垣市輪中館の開館時間は、午前9時〜午後5時。休館日は火曜日(祝日の場合は翌日)と祝日の翌日、年末年始の12月29日〜1月3日。輪中生活館の一般公開は土・日曜日と祝日の午前9時〜午後5時。12月29日〜1月3日は休み。入館料はいずれも無料。大垣市輪中館の電話番号は0584-89-9292。
2018.09.03(子林 光和)

今回の西美濃な人

長谷川 章(はせがわ あきら)

 岐阜大学教育学部卒。社会科教諭として岐阜市立長森中学校や大垣市立北中学校、中川小学校などで教壇に立つ。多治見市立脇之島小学校や大垣市立日新小学校校長も歴任。趣味は絵を描くことや読書。最近は俳句もたしなむとか。健康法は毎朝自宅近くの堤防などでの約1時間のウォーキング。教育現場が長く、周囲からは「穏やかでどなたとも和やかに話す人」と慕われている。大垣市新長沢町で妻と母親、二男の4人暮らし。


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