大垣地域ポータルサイト 西美濃


西美濃
トップ

ひまわりからのメッセージ

戻る
ひまわりからのメッセージ

こころの中に

 今年は平成最後の年となって、様々な所で“区切り”が叫ばれています。元号というものを改めて考えさせられる昨今です。

 昭和天皇が崩御された朝、私は京都駅のプラットホームに立って構内放送を聞きました。その日は、奈良へ日帰りの一人旅に出た日でした。奈良に着くと訪れる仏閣では半旗が掲げられ、僧侶の方達があわただしく祭壇の準備に追われていました。

 あれから三十年。あっと言う間に過ぎ去ってしまった様に思います。この三十年間に私は何を為し得たのかと思い返しても、ただ、あわただしく日を送ってきてしまったという思いしかありません。多くの子どもたちや親しい人々との別れを経験したにもかかわらず、自分には明日という日が必ず来ることを疑いもせず生きてきた歳月でもありました。

 しかし、この年末年始にかけて命というものを考えさせられる出来事がいくつもあり、つい一週間前には心の友ともいうべき人を失い、喪失感や虚しさが心を占めています。この心の有りようは、両親の時よりも深いものがあります。

 友は、身の回りの整理をし、後のことまでも全て手配して逝きましたが、私ときたら、やりたいこと、やらなければならないことを次々と呼び込んで終活には手をつけることができそうにもありません。友の覚悟には程遠いのです。しかし、人は誰もが心の中に様々な思いを抱き、それに耐えて生きていくことを思えば、私には私なりの生き方を貫くしかありません。「ずっとずっと見守っているからね。」というのが友の最後のことばでしたから、きっと私のこころの中にずっと生き続けてくれるに違いありません。

 今日、庭の垣根の根元に濃紺の小さな董が咲いているのを見つけました。その花はとても香りが良く、いつもは摘み採って楽しむのですが、そっと庭に置いておくことにしました。遠い昔、京都の寺で見つけたことばが思い出されたのです。


  花は黙って咲き 黙って散ってゆく
   そうして再び枝にかえらない。
  けれども その一時一處に この世の全てを托している
   一輪の花の聲であり一枝の花の真である
  永遠に減びぬ生命の喜びが
   悔いなくそこに輝いている


2019.1.20 発行



ひまわりからのメッセージ