街路樹の葉が色づき、庭先では石蕗が咲きはじめていて十一月半ばを迎えようとしています。日々の過ぎゆきの何と速いことでしょう。
十一月は、私の好きな季節です。万葉集に春と秋とを比べて少しだけ秋が好きという長歌があって、小学生の頃に「冬ごもり春さり来れば……」と一心に諳じていたことがありましたが、私の秋好きもそんなところから来ているのかもしれません。道端に吹き寄せられた落葉が、カサコソと小さな音をたてて風に吹かれていったり、街路樹からひらりと音もなく落ちてくる葉をいとおしく思ったりするのも、そこに樹々のいのちが感じられるからでしょう。次の年の春にそなえた樹々のいとなみは、「今だけ」しか見えていない自分への反省にもなっています。
秋を詠ったランボーやヴェルレーヌの詩を思い出しながら、ふと詩情に耽るのも悪くないなあと思い、時には田舎道に車を止めてほんのわずかな時間を自然に向かうように心がけています。心のゆとりが生まれたらいいなあと思いつつ……。
ところで、このところ同級生の記事が相次いで新聞に紹介されていました。一人は私設のコンサートホールを持つ渡辺久恵さん。外国から音楽家を招いてコンサートを開いていたのですが、ご主人の死後しばらく休止していた活動を再開したのでした。私は、あいにく仕事が入っていてコンサートに行くことはできませんでしたが、嬉しいニュースでした。
もう一人は野部博子さん。旧徳山村の写真を撮りつづけた増山たづ子さんの遺志を継いで、写真展や講演会を続けています。
同級生には、その他にも岐阜県のジュニアオーケストラの指揮者として活躍してうる古宮山和夫さんもいて、遠い昔に机を並べて共に学んだ仲間達の活躍に励まされる思いでした。
人生は様々です。定年退職後、悠々自適の生活を送っている人も多く、どんな人生がいいのかはわかりませんが、私は私です。自分が選んだ道だけれども、自分に与えられた道かもしれないと思って進んでいこうと思います。終活も断捨離も、私の辞書にはまだ登場していませんから……。
晩秋のわが家の庭の一隅に、石蕗の黄の色が華やかさをかもし出してくれています。暦の上では、もう冬です。
2018.11.12 発行