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ひまわりからのメッセージ

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柚木 馥先生から教えられたこと

 大垣市の船町燈台の前にある「とうだいまえ」というレストランは、障がいのある方がお勤めしていらっしゃるレストランで、同僚の先生に誘われて入ってみました。

 感じの良い店内で美味しいランチをいただきながら、遠い昔に訪ねたスウェーデンのグラサドゴンゲンというレストランのことを思い出していました。岐阜大学の柚木馥先生とご一緒した北欧の旅は十日程でしたが、そのレストランでいただいたパンは、他のどのレストランよりも美味しく、ダウン症の方達など皆さんが本当に生き生きと働いておられたのが印象的でした。「日本にもこんなレストランが作れたら良いね。」と話し合った日のことを思い出し、柚木先生にお会いしたくなって一冊にまとめてある先生のアルバムと書簡をひもといてみました。

 柚木先生は、大学の教授でしたが実践家でもあり、「あしたの会」という後援団体を起ち上げ、作業所や施設の開設に奔走された方でした。岐阜大学の卒業生でもない私でしたが「来る者は拒まず」の先生に多くのことを学ばせていただき、特殊教育特別専攻科の一期生として、一日の仕事を終えてから岐阜大学まで通い、養護学校教諭の専修免許を取得させていただいたのも先生のお蔭でした。

 先生は、子どもたちを理解するのは、心理検査などではなく、目の前にいる子どもとじかに向き合い、寄り添うことが大切であると説かれました。私もそう思います。心理検査の数値だけが一人歩きすることは避けなければなりません。けれど「若い人たちには心理検査の学習も必要なことです。」と言い張って、研修会には心理検査の資料も必ず入れ込んだものでした。きっと先生は苦笑いしながら、頑固な私を許して下さっていたように思います。

 先生からの最後の書簡は、文字が乱れながらも末期ガンと闘われる先生の思いが痛い程伝わってきます。亡くなる直前まで、障がいのある子どもたちを愛し、働きつづけられた先生、私は、まだまだ足元にも及ばないなあと思います。でも、アルバムの中からの先生のあたたかい眼差しに、また力をいただいた気がしています。

 梅雨明けも真近です。


2017.7.3 発行



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