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ひまわりからのメッセージ

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ひまわりからのメッセージ

文字への興味

 あっという間に月日が過ぎて行き、十一月になってしまいました。人間、年をとると日が早く過ぎると聞いたことがありますが、まさかこんなに早く(?)実感させられるのは、余りうれしいことではありません。

 小学校へ訪問すると、子どもたちは熱心に文字を習っています。その姿を見ながら、遠い昔、父と文字あそびをしたことを思い出すことがあります。父は幼い私をひざに「ひら仮名の『あ』という字は『安』という漢字からできたんだよ。」と、『安』から『あ』へと父は少しずつ文字をくずして書いて見せてくれました。「じゃあ、『い』は?」「以 だよ。」「『う』は?」「宇 だよ。」父の手元を見つめながら文字の成り立ちの面白さに惹きつけられたものでした。漢字についても、その文字の成り立ちを知ることで興味を覚えたのでした。

 大きくなってからは、「シンと読む字がいくつ書けるか競争しよう。」等と よく父に挑んだものでしたが、私がせいぜい思いつくのは、心、新、親、信、慎、真、くらいだったでしょうか。しかし、文字への興味や漢字のもつ意味の面白さに気づかされたのは、そんな父とのやりとりの中だったように思います。

 熟語の練習をしている子どもたちに「どういう意味?」とたずねても「分からん。」という答が返ってきたり、お母さんたちから「漢字の宿題に時間がかかって…」と相談されたりすると、もっと楽しく学ぶ方法はないのだろうかと考えたりします。覚えなくてはならないという気持ちだけで学んでいける子もいるのかもしれませんが……。

 秋の夜長、四十年以上も前に逝ってしまった父のことを思い出しながら、でも、結局私は、吾が子と文字あそびをしたことはなかったなあと、思ったことでした。そして久しぶりに筆を手にしてみたくなりました。


2013.11.12 発行



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