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□ひまわりからのメッセージ

遊び心

 四月二十九日の朝、偶然つけたNHKテレビの「人間国宝 最後の挑戦」という番組に見入りました。

 番組は、工業デザイナーの水戸岡鋭治さんがJR九州の豪華列車「ななつ星」の作製にあたって、有田焼の人間国宝、十四代酒井田柿右衛門に車内装飾を依頼する場面から始まりました。

 依頼を受けた十四代は、その場で快諾し、製作にとりかかります。文鎮や壁面、洗面鉢などの製作過程で十四代の口にされる一言一言が心に残りました。その中に「遊び心」ということばがありました。十四代柿右衛門は、特に「あか」の美しさを評される作家ですが、四百年も続く柿右衛門窯の古い型の中に残る蜂の巣を模した香合、とぼけた表情をした人物の文鎮、空想の人物が持つ花瓶など、見る者の心がふっとなごむ作品を番組は紹介していました。確かにそれらの作品の中には作者の遊び心が垣間見えました。そして、十四代は素焼の洗面鉢を前に、「金魚と藻とを描き、そこに地紋を入れる」ことを提案されます。自身もかつて金魚と藻を描いたことがおありだったのですが、末期のガンを病み、酸素吸入をくり返しながら、十五代目となる息子さんに作品をゆだね、厳しいアドバイスをされていました。「上手に格好よく描こうとせず、もっと素直に、まねをせず、自分の思うように描け。」と。洗面鉢に水を入れると、金魚と藻がまるでそこに在るかのように揺らいで見えることがイメージとしておありになったのでしょう。

「可能性を考えながらやっていかないと広がっていかない。」の言葉を残し、洗面鉢が完成し、荷出しをされた日に十四代は世を去られたとのことでした。

 一つの道を貫くということ、かつての留岡幸助の「一路白頭に至る」のことばを思い返したひとときでした。
2014.5.12 発行

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